リアル・ヒーローショー

17　穏やかな時 ページ18

「怪我の具合はどうだ？」

「それ程酷いところはなさそうだ。
これ、あんたがやってくれたんだろ？
ありがとな」

大我の質問に武士は答え、ベッドから身を起こす。
綺麗にかつ動きを妨げないように配慮されて巻かれた包帯は、確かに医者のものだった。

そんな二人を見て、ナーガが口を開いた。

「大我と武士は仲直りしたのか」

予想外の言葉がナーガの口から出て来て二人は意味が分からずに首を捻る。
ナーガは続けた。

「武士は大我とは組めないと言ったと聞いた。
だが今は普通に話しているし、少女と戦う前、俺と鉄也が合流した時も一緒にいた」

「あぁ……あれは何ていうか、喧嘩してた訳じゃないから安心しろ」

「分かった」

武士がそう言うと、ナーガはすんなり納得して引き下がった。

「俺は用事があるから少し出る。
ニコ、行くぞ」

「りょーうかいっ」

大我が先程の少女、ニコに声をかけて病室を後にしようとして、鉄也が訊いた。

「どこに行くの？」

「昔の仕事場だ」

「僕も行く」

「勝手にしろ」

素っ気なく返事をし、大我はニコを連れて鉄也のことなどお構いなしに歩いていく。
鉄也は慌てて二人の背中を追った。

病室には武士とナーガが残された。

特にすることも話すこともなく、沈黙が降りてくる。

すると、ナーガが手鏡を出して口をいー、と開き始めた。

「何してるんだ？」

「笑顔の練習だ」

そういえば彼は感情が欲しいんだったな、と思い出す。
武士はナーガを見つめ、やがて口を開いた。

「横に口を開けるんじゃなくて、ちょっと斜め上に上げる感じだ。
こんな風に」

武士はにいっとナーガに笑ってみせると、ナーガも真似してぎこちなく笑みを浮かべた。
ぎぎぎ、という音がしそうな程固い動きだったが、過程に目を瞑ればきちんと笑顔に見える。

「動きが固いけど、いい感じじゃん」

武士が褒めるとナーガは嬉しそうに、しかし真顔で喜んだ。

☆☆☆

「健、ブルーアース号がディメンション反応を確認した」

青年が男性に呼びかける。
健と呼ばれた男性は訊いた。

「行けるか？」

「もちろんだ。
二人も行くぞ」

青年が健以外に同じ部屋にいたもう一人の青年と少女に告げる。
ワン、と犬の鳴く声がする。

二人が意を決したような表情で頷いたのを確認し、青年は自身の宇宙船であるブルーアース号を操作をした。

四人の姿が光に包まれてその場から消える。

代わりに、彼らは別の場所へ降り立った。

大我達のいる、エグゼイドの世界に。

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