第112話 ※特殊フィルターがかかってます。 ページ21
周りがミニアルジェから聞こえる声に嬉しそうにしているのをよそに、僕は汗を流しながら戦うユキ様から目が離せなかった。
〈よしよし。綱吉くんたちは、作戦会議はこれからってところかな？〉
「ああ、そうだぞ」
「あっ、炎が……！」
「凄まじいな…」
ユキ様の嵐の炎と“消滅”の炎とがぶつかり合い、押し合い、互いの炎が夜空にまで弾け飛ぶ。
〈私はこっちのことで手一杯だ、ごめんね。ただ一つ言うならば…〉
〈せいッ！！〉
〈とォッ！！ キミたちらしい戦い方をすればいい〉
「オレたちらしい……戦い方……？」
〈さて。ミドゥーザ、少しは腑抜けた顔がどうにかなったかな？〉
「ユキ様…」
〈確かに、私もキミも、雪属性の第二の特性なんてこれっぽっちも知らなかったさ。それにキミは未来にきたばかりで頭が混乱しているだろう……それは仕方ない。けどな、〉
油断も隙も生み出せない筈の状況の中、このひとはホログラム越しに僕の瞳を真正面から見つめ返してきた。
〈自分から逃げるな〉
！！！
そうか、僕は……自分自身から逃げていたのか…
〈怖いのは当然で、知らないことがあるのはただの事実だ〉
僕と同じ筈の“氷の目”が煌めく。
黒兎と同じ筈の“氷の目”が強い輝きを抱いて僕を射貫く。
〈“消滅”を知らなかったのはさっきまでのことだ。今はもう、私たちはそれを知っているし、その特性を目にして学習しただろう……これは黒兎と同じ土俵に立ったってことで、まったくもって不利な状況なんかじゃない〉
不敵に微笑むこのひとのなんて眩しいことだろう。
〈寧ろここからが本番だろう、状況をひっくり返す……な〉
ユキ様の瞳から、目には見えない勇気が僕の中に流れ込んでくるようだった。
どきどきと心拍が高鳴り、恐怖で一旦は退いていた高揚感が再び沸き上がって来る。
頭の天辺から足のつま先まで、血液が物凄い速さでどくどくと駆け巡っているのがわかった。
〈無理だ、勝てっこないってキミは言ったけどな、私を誰だと思っている？ 無理も不可能も不完全も……そのすべてを可能にしてやる〉
いっそ傲慢に聞こえるほど清々しく言い切ったこのひとは……三浦ユキというひとは、本当に高潔なひとだと思った。
どこまででもこのひとについて行きたい、そうも思った。
〈こい！！ ミドゥーザ！！！〉
第113話 ※やっぱり特殊フィルターがかかってます。→←第111話 同時通信
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 19人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：霽月 | 作成日時：2019年5月9日 21時
