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鳴くんが連れて来てくれたのは
稲実の近くの河川敷だった。
『なんか涼しい・・・』
「俺のとっておきだもんね!」
笑っている鳴くんを見ると辛い。
こんなに眩しく笑う、優しい、素敵な人を
私はどうして好きになれないのか考えちゃうから。
「寮の朝食の時間もあるし、本題入ろっか。」
『うん。・・・・・・あのね、』
「ごめん・・・俺から話しちゃダメ?」
まさかの返事に一瞬固まってしまった。
鳴くんが話したいことがあるなんて思わなかった。
『全然!鳴くんから話して?』
私はこの時の鳴くんの気持ちは分からなかった。
正確には分かろうとしなかった。
何を言おうとしているかも考えなかった。
鳴くんになんて言おうかばっかり考えてた。
「俺、やっぱりAちゃんのこと好きじゃないみたい。」
『・・・・・・・・・え・・・?』
「初めは笑ってるAちゃんがすごい好きで、気づいたら好きになってた。」
鳴くんから目が離せない。
目は合わない。
水面を見つめながら鳴くんは続けた。
「段々話すのが楽しくなってきて、もっと好きだ、って思って、協力するフリしてデートまでして・・・本当に最低だよな、俺。」
『最低なんかじゃ・・・』
私の言葉が途切れたのは、
鳴くんが人差し指を私の唇に当てたから。
「・・・他の男で頭がいっぱいな女の子、好きにはなれなかったよ。」
ここまで言われてようやく気づいた私は
本当に本当に馬鹿だと思う。
「・・・俺は今、Aちゃんの返事を聞かずに一方的にAちゃんを振ったんだよ。この意味わかるよね?」
そう言って私を見た鳴くんは
すごく悲しそうに笑っていた。
「白河には今日伝えるの?」
『・・・うん、そのつもり』
「そっか、ドキドキだね」
無理したように笑う鳴くんは
私の好きな鳴くんじゃなくて
『鳴くん』
「ん?」
『・・・ありがとう、鳴くん大好き。』
涙を堪えながらそう伝えると
体温に包まれた。
「・・・俺も、大好きだよ。」
抱き締められてるんだ、って遅れて理解した。
「もう俺の大好きはAちゃんの大好きと同じ意味だから大丈夫だよ」
そう言って鳴くんは私から離れ
優しい笑顔を残して去っていった。
『・・・頑張らなきゃ』
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幸菜(プロフ) - シェリーさん» コメントありがとうございます〜!そう言ってもらえて嬉しいです(;;) ほかの作品もぜひ覗いていってもらえると嬉しいです(;;)(;;) (2018年12月12日 19時) (レス) id: 25eae0690c (このIDを非表示/違反報告)
シェリー(プロフ) - 今更ごめんなさい〜。すごくいいお話でした。泣きました。ほんとに。鳴ちゃんがかっこよすぎて……。かっこいい鳴ちゃんを書いてくださってありがとうございました! (2018年12月5日 22時) (レス) id: ddd17e384f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:幸菜 | 作者ホームページ:http://twitter.com/arykn___
作成日時:2018年9月4日 0時