まふまふの彼女（続）

彼女。130 ページ33

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あの事件の日、ずっと自分を騙し続けて、我慢していたものが全て栓を切って溢れ出した。


知らない男の人に迫られて、昔の記憶が頭の中を駆け巡った。




不安、恐怖




そんな言葉だけじゃ表せないくらいの感情。


ただ、高校生の時は音楽があった。


両親は護身術も習わせてくれた。



だからそれに縋って熱中して、心の奥底に仕舞うことができたんだ。



…でも今回は違う。


その私の味方だったはずの音楽に裏切られた



そう、思った。


思ってしまった。


事件当初はそんなこと有り得ない


自分はなんてことを考えてるだ


と、自分を責めた。



だってそうじゃない。



音楽に罪はない。


だから音楽に触れようとしたんだ。



…でも無理だった。


今までみたいに、音楽が作れなくなった。


何も湧かない。


好きな気持ちも興味も創造力も。


ただただ無になって歌って、適当にメロディーを打ち込んだ。


そして出来上がった曲は、なんとも酷いものだった。


気持ちなんて全く伝わってこない。


こんな酷い音楽をどうして普通の顔をしてファンの皆さんに出せるだろうか


とさえ思った。


…だからその日、つまり事件1週間後から、音楽には一切触れないようにした。


何も聴かなかった。


聴くのはまふの声だけ。


あと、たまに電話をくれるそらるさんや96ちゃん、浦島坂田船のみんなの声も。


そう優しく接してくれる仲間や友達は、全て音楽で繋がった人たちだ


と、心の中ではわかっている。


それでも、確かに私の音楽に対する熱意は無くなっていた。


だから一度見せられたまふのツイートのリプも見ないようにしたんだ。


…ただただ、ファンからの期待と好意が怖かった。




そして色々考えて、もうこれから先音楽には関わらないでおこうと決めた。


ダラダラ休業して、周りの人に迷惑を掛けたくない。


けどその時は、何故か、音楽への熱意はないはずなのに泣いた。


ボロボロ、1人の部屋で1時間以上ずっと泣き続けた。


それが一昨日の話。




で、気持ちも落ち着いて涙も止まって、まふに言おうと思ったんだ。


…彼にとっては酷なことだとわかっていたし、止めるだろうこともわかっていた。


でも今一番私の近くにいてくれるのはまふだ。


だから伝えようとした。


そしてまふはやっぱり止めた。


涙目になりながら、自分のことじゃないのに、すごく辛そうな顔をして。




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