まふまふの彼女（続）

彼女。101 ページ4

・




お泊まり会を終えて、気づけば3月に入っていた。




『あ、ねぇそういえば、14日って空いてる？バレンタインのお返ししたいんだけど…。』




まふはライブの準備があってなかなか会えないでいる。


こうやって電話だけで終わる日は少なくない。


だからその日は絶対に会いたいんだけど、




「ごめん、ホワイトデーはライブに出るの。」




この前バレンタインライブに行った時に、luzくんに誘われたのだ。


ホワイトデーのライブに出ないか って。


それは男性のみ参加のものらしいが、シークレットゲストとして私に出てほしいと。


もちろん二つ返事でオッケーした。


…ホワイトデーの本来の目的も忘れて。




『嘘でしょ？！ホワイトデーのって男祭りじゃん！！！だめ！！絶対だめ！！！』




急に大きくなった電話越しの声に、ビクッと肩を震わせた。


…そりゃこうなるよねぇ。



でもライブ見たあとだとどんなライブにも出たくなっちゃうんだよ。


キラキラしてたんだもの。




「ごめんね。もうオッケーしちゃったし、断れないの。

この埋め合わせはまたするから。」


『ううう…Aのバカ、』




うーって唸るまふに、やってしまったと後悔。


どうしたものかと頭をひねっていると、あっ、と良いことを思いついた。




「そうだ、

その日、まふ見学に来る？

他のライブの準備もあるし、無理にとは言わないけど…。」




3月はお互いに忙しい時期だ。


こんなことでまふの機嫌が良くなるわけじゃないとは思うけど、喧嘩はしたくないし、




『ほんとに？！いく！！！！』


「えっ、あ、よかった！じゃあスタッフさんに伝えとくね。」




…案外効果はあったらしい。


ほっと一息ついて口を開こうとすると、まって！とまふの声が聞こえた。




『ミニスカートとか露出の多い服はだめ！

お化粧もナチュラルにしてっ、あと、髪の毛も下ろしておいてね？！』




何とまぁ注文の多い彼氏だ。




「ふふっ、わかってる。気をつけます。」




こんなのも愛情表現だと思ってしまうのだから、もう末期だと悟る。


まふは不器用だけどストレートだ。




『Aの歌は楽しみだけど、嫉妬して素直に楽しめないかもしれない…。ごめんね。』


「歌い手としては楽しんでほしいけど、彼女としては嫉妬してくれたら嬉しいよ。」




シュンっと効果音が付きそうに、わかりやすく落ち込むまふに、また笑みがこぼれた。





・

彼女。102→←彼女。100

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す