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「冗談……ではないのですね?」

そう聞いた私を、千景様は静かに見つめた。






「‥‥‥嘘…」

雪村の里は滅ぼされた。人の手によって。



はいそうですか、と頷ける話ではない。かと言って、千景様に限ってこんな冗談を言うはずがない。

「あの双子も…死んだのですか?」




恐る恐るといった感じで尋ると、ようやく千景様は口を開いた。

「ああ。女鬼の方は死んだ。最も遺体は発見されていないがな。兄の方は、南雲家に引き取られたそうだ。」




「よく南雲家が引き取りましたね」

「女鬼と偽って承諾させたようだ。もうとっくにばれているだろうがな」



「それは‥‥‥」

可愛そいうなことだ。きっと良い扱いはしてもらえないだろう。









千景様は淡々と話を進める。

「これで分かっただろう。もはやこの俺に釣り合う血筋の女鬼は多くない」



結局そこに行き着くのか、と肩を落とした私に更に千景様は畳みかける。

「俺とともに来い。お前にまで死なれては、鬼の一族の純血を守るのは更に難しくなる」




「いつもそう‥‥‥」


「なに?」








「千景様はいつもそればかりです!純血純血と仰いますが、それは私自身でなく、私の血筋を求めていらっしゃるのと何も変わりません!そんな方について行くことは出来ません!」




思わずそう言い切った私を千景様は少しばかり驚いて見つめると言った。

「それのなにが悪い」



「え?」

「血筋を選んで何が悪いというのだ。それに、俺とて血筋がどれ程よくても気に入らん女を迎えることはせん」

「‥‥‥」

相変わらず自分勝手だ。



 蓮との婚約も私の意志ではなく、私は嫌々の婚約だったが、結果的には幸せだった。

 それにもしかしたら私と婚約していたのは千景様かもしれなかった。けれど今の私には蓮がいる。







今更他の男と添い遂げようとは思わない。

 私はその気持ちを伝えた。

「私は、生涯蓮だけと誓いました。ですから千景様がどれ程お声がけを頂いても、私は応じることは出来ません。」





「‥‥‥」

千景様は不服そうにこちらを睨んでいたが、やがて立ち上がった。






「秋山の娘、俺は諦めはせん。次は必ず連れ帰る。心しておけ」

千景様はそう言い残すと茶屋を出た。

*3→←西国の鬼の頭領〜現実〜



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Maple?(プロフ) - ほっちさん» 読んで頂きありがとうございます!ミスの指摘ありがとうございます。重大な見落としでした……時間が出来次第訂正させていただきます。 (2021年9月20日 11時) (レス) id: 2807811a98 (このIDを非表示/違反報告)
ほっち - 素敵な作品で楽しく読ませていただいています。ひとつ気になるのが新撰組がいたのは京都では無いでしょうか? (2021年9月17日 17時) (レス) id: 9c174154d3 (このIDを非表示/違反報告)
斎藤ようこちゃん(プロフ) - 久しぶりです。。斎藤さんとはもう会えないの??かしら? (2021年6月13日 2時) (レス) id: e53507092f (このIDを非表示/違反報告)
斎藤ようこちゃん(プロフ) - こんにちは。分かりました。楽しみにしています。 (2021年5月16日 11時) (レス) id: 642b16c0b9 (このIDを非表示/違反報告)
斎藤ようこちゃん(プロフ) - 先がとても気になります。 (2021年4月29日 15時) (レス) id: e53507092f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:明風瑠 x他1人 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2021年2月11日 8時

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