66話 ページ7
貴女side
ﾊﾟｷﾊﾟｷｯ
ﾌﾞｼｭｯ
カイの骨は、巨人の歯により意図も簡単に折られ、胃袋へと流れていく。
遂には頭を噛み割られ、脳らしき物と大量の血が噴き出す。
私は、ただ……ただその状況を眺めていた。
悲しみ、恐怖＿＿＿そんな感情は一切湧いてこない。
やがて、カイを食べ終わった巨人は私に手を伸ばす。
私は、最後の1本のプレードでさっさと項を削いだ。
ﾄﾞｼﾝｯ
蒸気をたてて蒸発していく巨人の死体と、既に原形を留めていないカイの死体を見ながら、何故こうなったかを思い出す。
＿＿＿だが、意識を手放してから今までの記憶が無い。
何があった…いや、今はそんな事どうでも良い。まずは、これからどうするか。
木の下に置いていた兵長のマントを羽織ながら状況を整理する。
撤退命令は10分程前に出ている。エルヴィン団長の事だから、1番最善の行動＿＿＿＿＿＿壁内へのルートを辿っているはず。
此処は、左翼後方。合流するには、こっちに行けばいい……でも、此処に来てからの正確な経過時間が分からない。もうとっくに、出発して壁内へ戻っている可能性もある。
なら、合流を考えるよりも壁内へ戻る事を目的とした方が良い……
ﾋﾟｰ！
指笛をふくが、馬は来ない。
貴『人の足では戻れない……』
ハンジさんに教えて貰った事。
壁外では、馬の足でないと巨人からは逃げられない。
でないと、生存は絶望的。
貴『このまま死ぬのも、悪くないかも……』
ボソッと呟いた。
そう。ここで死んでしまっても、構わない。未練もない……
＿＿＿“絶対無事で戻って来いよ。俺は……大事なモンを失うのはもう嫌なんだ………”
……あぁ、やっぱりダメだ。死ねない。
ここで私が死ねば、きっとあの人は自分を責め立てる。何故1人で行かせたのか……自分の判断を後悔する。
あの人はそういう人だ。
生きたい訳でもない……でも………
兵長、お願いです。重荷になる事は解っています。ですが、今だけ…今だけ……貴方を支えにして生きても良いですか？
心の中でそう言い、走り出した。
･
･
･
貴『ﾊｧﾊｧ……』
居ない……
走ってからしばらく経つが、人は見当たらない。
予想は当たってた。既に、壁内へ戻っている。
壁まであと……
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作者名：月下誠 | 作成日時：2019年8月21日 19時
