第260話 月 H ページ22
玲音side
とある路地裏を歩いていた。
向かうのは、お母様のいる所。
玲「確か…」
辿り着いたのは高層ビルに囲まれた、暗い突き当たり。
すると、陰から“何か”が出てきた。
そして形作られたのは
玲「ただいま戻りました、お母様」
「…えぇ」
死神の鎌を持った、私の母親。
お母様は私を舐め回すようにして見て、口を開いた。
「貴方は…また心臓を手に入れられなかったのね」
私の娘なのに情けない、と悪態をつく。
「2度もチャンスを与えてあげたのに、１度目はあの兄のせいで、今回は殺しもできなかったようじゃあね…」
私の面汚しはそろそろ消えて貰おうかしら、と鎌を構える。
玲「待って下さい」
言い訳はよしなさい、と冷たい目で私を見下ろすお母様。
玲「ﾀﾋぬくらいなら…いっそのこと、今までの記憶とこの能力を消してくれませんか」
お母様の表情は依然として変わらない。
ふ…と軽い笑みを溢して、私はお母様の目を見つめる。
玲「私は、“死神じゃありませんでした”」
死神に成りきれなかった、落ちこぼれの人間です。
確かに貴方から産まれた、死神の能力を授かった、けれど。
人間の父と死神の母から産まれた、どちらともつかない子。
…最初は、死神として生きようと思いました。けれど。
人の心も持った私には、人を殺すことなんてできなかった。
死神として生きられないならば、この力も記憶も捨てて、人として生きてみたいんです。
玲「…だから、“死神の私”を消してくれませんか」
長い長い沈黙が降りる。
「────はぁ、なんて我儘な」
二度と私の前に現れるな、という言葉と共に鎌を頭上に翳される。
「今度は、幸せになりなさい」
くらりと薄れ行く意識の中で、お母様が笑ったような気がした。
─────あぁ、やっと心の底から笑える。
意識を手放した。
«また、どこかで会いましょう»
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作者名：月見だんご 赤メガネ x他2人 | 作成日時：2018年1月10日 3時
