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心身が共に癒えると、私とご主人様はノルデ様のところへ向かった。
あの人が異端についてはよく知っているだろうと、踏んだためだ。ノルデ様はダイニングルームにいた。煙草の煙を蒸かし、彼は金色の目だけをこちらに向ける。
「ああ、誰かと思えば黒さんとサイファちゃんか」
穏やかな声色でノルデ様はそう言った。
「ノルデ」
「ああ、無理に言わなくてもいい。予想は大方ついているからな。
あの異端の子のことだろう」
ノルデ様はそう言うと手の中で煙草の火を消した。そしてテーブルの上にある新聞をご主人様に渡す。
「数年前、あの街で少女を狙った連続殺人事件が起きた。被害者は確認されているだけで十三人。年齢は八歳から十三歳までの、どの子も大人として扱うには、あまりに若すぎる子達だ。
案の定、あの路地でも一人殺さていたよ。八歳、この事件の中では最年少だな。父親は戦争に行き、現地で死亡。母親と妹と三人暮しだったそうだが、決して裕福な家庭とはいえず、幼いながらに自分の作ったハンカチなんかを売り歩いていたらしい。明るくて、笑窪のかわいい子だったそうだ。恐らく、帰る途中で犯人に目をつけられたのだろうな」
淡々とノルデ様はそう話した。途中、隣に立っていたご主人様が、悔しそうに、悲しそうに拳を握りしめ、唇を噛み締めていたことを私は気付かないふりをした。私は無知だから、ご主人様を慰めるような言葉を知らなかった。
「……黒さんや、黒さん」
ノルデ様はご主人様の名前を繰り返し呼んだ。
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