検索窓
今日:1 hit、昨日:2 hit、合計:6,265 hit

17 ページ17

心身が共に癒えると、私とご主人様はノルデ様のところへ向かった。
 あの人が異端についてはよく知っているだろうと、踏んだためだ。ノルデ様はダイニングルームにいた。煙草の煙を蒸かし、彼は金色の目だけをこちらに向ける。

「ああ、誰かと思えば黒さんとサイファちゃんか」

 穏やかな声色でノルデ様はそう言った。

「ノルデ」
「ああ、無理に言わなくてもいい。予想は大方ついているからな。
 あの異端の子のことだろう」

 ノルデ様はそう言うと手の中で煙草の火を消した。そしてテーブルの上にある新聞をご主人様に渡す。

「数年前、あの街で少女を狙った連続殺人事件が起きた。被害者は確認されているだけで十三人。年齢は八歳から十三歳までの、どの子も大人として扱うには、あまりに若すぎる子達だ。
 案の定、あの路地でも一人殺さていたよ。八歳、この事件の中では最年少だな。父親は戦争に行き、現地で死亡。母親と妹と三人暮しだったそうだが、決して裕福な家庭とはいえず、幼いながらに自分の作ったハンカチなんかを売り歩いていたらしい。明るくて、笑窪のかわいい子だったそうだ。恐らく、帰る途中で犯人に目をつけられたのだろうな」

 淡々とノルデ様はそう話した。途中、隣に立っていたご主人様が、悔しそうに、悲しそうに拳を握りしめ、唇を噛み締めていたことを私は気付かないふりをした。私は無知だから、ご主人様を慰めるような言葉を知らなかった。

「……黒さんや、黒さん」

 ノルデ様はご主人様の名前を繰り返し呼んだ。

18→←16



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (12 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
3人がお気に入り
設定タグ:オリジナル , 人外 , 依存   
作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:音霧 想 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2018年10月20日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。