擦り傷騒動 再来! ページ5
そうだった。
今日は、この間細菌と戦ってボロボロになってしまった戦闘服を替えに行き、新しい服に着替えている途中で細胞くんたちにバドミントンに誘われて、それで慌ててベルトを締め、L-セレクチンの電源も入れずに遊びに行ってしまったんだ。
「ああおい4989番!?」
「ウソだろまたかよ!」
「4989番が、傷口にィィ!!」
「お前っ、だからあれほどL-セレクチンをーーーッ!」
ぶわ、と持ち上げられ、真っ暗な穴に向かってすっ飛ばされる。
あーいつかのときみたいだな、それならあのときみたいに上手く何かに引っかかれないかな、と思っていると、なぜかブン回されながらも自分の目は、一人の赤血球を捉えた。
【再来・擦り傷】
「こんにちは、酸素でーす」
「お疲れ様。あれ、なんかこの間より明るくなった?」
「?この間というと…」
「ああそうか、僕ら細胞のことはそんなに細かく覚えてないよね。多分君のはずなんだけど、いつだったか、あまりにも君の顔色が悪くて僕が『腹痛?』って聞いたときあったじゃない」
「――あ、あ…!イエ、あのときはどうもすみませんでした!疲れと、悩み事と…色々重なってたもので」
「そう。それじゃ、その悩み事は何とかなったみたいだね」
「あれ、わかりますか?」
「うん。なんだかサッパリしてて、今日の君はとても良いよ。――さ、引き続きお仕事頑張って、ネ!」
どすんと、大量の二酸化炭素が目の前に積み上げられる。あーこりゃ台車だな、と思いながら近くにあった台車を持ってきて、二酸化炭素を積み、もう一度細胞さんにお辞儀をして来た道を戻り始めた。
ここは表皮の毛細血管、肺に戻るまではまだまだかかる。
上着を裏返し、よし、と気合を入れた――そのとき、
「す、擦り傷だあぁ!」
「細菌が入ってくるわよーっ!」
激しい音と共に、遠くの方で閃光が見えた。体が浮き上がりそうになって、慌てて荷物を押して近くの建物の陰に隠れる。
擦り傷はここからは少し離れているようだ。少しでも遠くへ行こう、と建物の陰になりながら道を戻ろうとしたのだが。
「ま、まだ!?」
「こっちにも擦り傷が!」
「まずい、逃げろー!」
血球たちが口々に騒ぐ。振り返って、目を見張った。
なんと、例の巨大な擦り傷から点々と、別の小さな擦り傷が発生して――それは今自分がいる場所に向かって来ていたのだ。
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お魚煮干し(プロフ) - オザさん» キラーさんには殴られたくないなぁww続きも頑張ってくださいね♪(゚ー゚*) (2018年9月2日 10時) (レス) id: 7be352b008 (このIDを非表示/違反報告)
オザ(プロフ) - カノン♭さん» ありがとうございます!話の途中と最後で、あの言葉の重さが違っていることが伝えられればなぁ〜と思って書きました!最後までお読みいただきありがとうございます!! (2018年9月2日 9時) (レス) id: 5d539585d0 (このIDを非表示/違反報告)
カノン♭(プロフ) - 第一部完結お疲れ様です!話の途中と最後に題名回収。とても好きです!!!! (2018年9月2日 0時) (レス) id: ac2788321e (このIDを非表示/違反報告)
オザ(プロフ) - まじかるれいん☆さん» 終わり方気に入ってくださる方がいてよかった〜〜ぁ!楽しんで読んでいただけたようで本当に嬉しいです、続きも頑張りますのでお待ちください!最後まで読んでくださりありがとうございました!! (2018年9月1日 21時) (レス) id: 5d539585d0 (このIDを非表示/違反報告)
オザ(プロフ) - yamanaさん» ありがとうございます!!素晴らしいだなんてそんなに褒められたことなかったので今嬉しさでうぐうぐ言っています…。はい、続きも頑張ります!ここまで読んでくださりありがとうございました!! (2018年9月1日 21時) (レス) id: 5d539585d0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:オザ | 作成日時:2018年8月7日 11時