私には使命があります2 (ページ17)

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六拾四の幕(烏side) ページ17

目の前の書類に筆を落とす。
今日は切国や長谷部は出陣だから、久々に1人で部屋に篭る。

一｢主殿｣

｢おう｣

静かなこの部屋に、一期がジャージで入って来る。
きっと今日は久々の非番だから、他の奴らも武装なんてしていないだろう。

一｢一軍は出陣ですかな？｣

｢そそ、Aちゃんの練度上げ｣

一｢そうでしたか｣

大方、一期の弟達が探していたのだろう。
あいつら、相当懐いてたからな……

｢他の奴らはどうしてる？｣

一｢寝ているものもいれば、遊んでいるこどもたちや談笑している者など｣

｢平和だねぇ…｣

まぁ…最近休む暇もなかったからたまにはいいのかぁ…
ふと、静かになった一期の方を向く。
彼は何か考えているのか、曇った表情だ。

一｢…あの｣

｢ん？｣

一｢A殿は…無事でしょうか…｣

ああ、そのこと。
元々心配性な一期だから、弟達以外に好意を持ったAちゃんに対して、こう不安がるのだろう。

｢検非違使の出現地は避けたからだいじょーぶ｣

一｢…そうですな、早く元気に帰ってきて欲しいものです｣

あー…そうやって笑うとこ、ホントに恋してるんだな。
今までは男ばかりの所帯だったから、そういう色なんてこの本丸には存在しなかった。
けれど彼女…Aちゃんはそんな彼らの心を揺らした。

だってーーー俺んとこに相談しに来る奴がどれほどいたことかーーーー
本当にあれは大変だった！！

話を聞くだけでいいなんて奴もいれば、どうすればいいなんて聞く奴も…無言で大倶利伽羅なんかが居座ってた時はどうしようかと思ったわ……

一｢…A殿は…目的が達成された後はどうするのでしょうか｣

｢…そう言えば｣

彼女の目的は、"この本丸を妖から守ること"。
彼女を生み出した安倍晴明からの使命だと言っていた。
けど、それを達成したらどうなるんだ？
帰るのか？どこに？
それともここにいるのかも？

…きっと、前者であればこいつら皆止めるだろう。

一｢ずっと…ここにいてくれくれたらと願うのですが…｣

｢…だよなぁ｣

なんとも複雑な気分に陥りながらも、俺は一期の話を聞きつつ作業を進めた。