4話 ページ6
私の違和感に気付いた店長が一言、こう言った。
「彼は、特殊なんだよ。」
「特殊…?どういうことですか?」
私の問いには答えず、店長は微笑んだ。
「2階で話そうか。」
うながされるまま2階の部屋に通される。彼が特殊とは、一体どういうことなのだろうか?あの美味しそうな匂いと関係しているの?俄然彼に興味が湧いてくる。
「それで…さっきのは、どういう意味なんですか?」
ソファで一息ついて、またさっきと同じ質問をする。
「……彼は、金木君は…元は人間なんだ。」
「元は、人間ですって?ありえないでしょう!人間が喰種になるなんて。」
「以前にこの近くで、鉄骨の落下事故があったのを覚えているかい?」
「……確か、巻き込まれて1人亡くなったとか。その人の臓器を勝手にもう1人の人に移植して問題になっていた事故ですよね?」
「そう。その被害者が金木君なんだよ。そしてもう1人の被害者が神代利世。」
「…っ!大食らいの、リゼ?彼女、死んだんですか?」
「分からない。表向きには死んだことになっているが…。金木君は、彼女の臓器を移植されたことで喰種になってしまった。」
「そんなことが…可能なんですか?」
「実際に金木君がこうなってしまった以上、可能だ…としか言いようがないね。」
「まあ……そう、ですね。」
「……君は、彼をどう思う?元は、人間だった彼を。」
「どうって……」
そんなこと言われても。という感じだ。正直まだ頭がついていってない。彼が元は人間だという…でも、今は喰種。私たちの仲間だ。けれど純正な喰種ではない。私の嫌いな人間なのだ。
ーーー店長が私に問いかけているのは、私が彼を受け入れられるかどうか、ということだろう。………答えは、ノーだ。
「私は彼を、認めることは出来ませんね。元が人間だなんて、ありえない。喰種の世界に人間が入ってくるなんて、そんなの絶対認められません。」
「しかし、彼はもう人間としては生きていけない。彼もまた、人間以外を食べられなくなってしまったのだから。以前は普通に食べられたものがある日突然食べられなくなる…これほど辛いことがあるだろうか?知らない方がよほどマシだったはずだよ。」
「そうかも…しれないけれど…」
彼が、どんなに辛い思いをしていたとしても…私が彼を受け入れることはないだろう。
この時の私は、そう信じてやまなかった。
3人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:葉生姜 | 作成日時:2018年11月7日 16時