外伝集 (ページ12)

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【アル戦】風邪っぴき2 ページ12

Side ギーヴ

ペルールが風邪を引いた。そうナルサスから聞かされた

(やはり先ほどのは見間違いじゃなかったか)

現在ペルールの部屋にきている
まだ冷やすものを持っていけてないというエラムに俺が申し出た
布を水を張った桶に浸し、絞る
ペルールの額にそっとおくと僅かに身じろいだ

(起こしたか?)

身じろいだだけで、意識は浮上していない

(しかし、まさか風邪を引いていたとはな…)

吐血で貧血を起こしていると言っていたため、少し調子が悪いだけだろうと気にしていなかった
それよりもペルールが…ルナが風邪を引くなどとは思いもしなかったのだ

「こいつも女だというのにな」

少し青白い頬を撫でる
よくよく考えるとこいつは仲間の死にずっと立ち会っている
だが、悲しい顔も泣きそうな顔もしていなかった
ずっと我慢をしてペルールであり続けようとしていたのだろう

『ん…』

「ルナ?」

流石に起こしただろうか
だがルナは俺の手に擦り寄るだけだ

「っ…!」

寝ぼけているのか、その幸せそうな顔は心臓に悪い

(もう用は済んだしな…もう部屋を出よう)

そう思って立ち上がるが

『……や、行か、ないで……』

「っ…!?」

くっ、と俺の手を引いた
その甘えるような行為は、とても愛らしく感じてしまう

(少しだけ、少しだけだ。手が離れるまでいよう)

俺は諦めて再び座る
普段のこいつからは考えられないような顔と言葉
調子が狂う

「…ルナ」

『んむ…』

頬を突くと難しい顔をする
百面相をするルナは面白く、可愛い

「何を一人で笑っておるのじゃ、おぬしは」

「っうぉお…!?」

ガタタッと立ち上がる
我ながら情けない声を出したと思うが許せ
全ての元凶が悪い

「驚かせないでくれるかファランギース殿…」

「ルナで遊ぶのに夢中になっているおぬしが悪いと思うがな」

「……」

正論だ
なにも言えない俺を放っておいてファランギース殿はルナに近づく
少し顔色を伺った後、彼女は頬に口付ける
あまりにも自然な動作で突っ込むのも忘れてしまう

「ギーヴよ、看病するのは良いが手は出すでないぞ」

「肝に命じておきましょう」

彼女はそのまま部屋を出て行く。まるで嵐のようだ
こんな状況下でも起きないルナを恨めしく思う

(本当、こいつには調子を狂わされてばかりだな)

今はただ、このあどけない寝顔を見守りたい