【アルスラーン戦記】詩が教える月への愛

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ぎゅぅっと腰に腕が巻きつく
強い力で抱きしめてくるかと思ったが、その腕は震えて、弱々しい
それでも、俺を逃すまいと必死だ

「どうした?お前は俺を好いていないのだろう?」

『一言も、そんなこと言ってない…!なんで、なんでそんなこと言うの…!』

「こんな事を言わせているのはお前だろう?」

正直、キツい
嫌われてもおかしくはない事を淡々と言うのは、俺の中の僅かな良心が痛む

『……行かないで』

「嫌だと言ったら?」

『やだっ…!』

まるで子供が駄々をこねるようだ

『私には……ギーヴしか、いないの』

「ナルサスやダリューンもいるだろう?」

『触れてもいいって、触れたいって思うのはギーヴしかいないの…!他の人に、触らせたくない…!私から、離れて行っちゃ、やだ…!もう貴方が飽きるまでとか、他の人口説いてもいいとか、いい子のフリ、するのやめるから…!!』

行かないで、と泣きじゃくる
本当に子供みたいなワガママ。けれど、これが彼女が隠していた本音
ずっと、言ってくれなかったものだ

「……そうか」

腕を解いて向き合って、抱き上げる
子供のように泣く彼女を、子供のようにあやす

「やっと、欲を口にしてくれたな。お前は」

『……?』

ぱちくりと瞬きをすると、大粒の涙がポロリと溢れる
今の彼女の瞳はとても綺麗だ

「お前はどうやら自分の気持ちを後へ後へ押しやってしまうらしいからな。悪いと思ったが、一芝居打たせてもらった」

『んなっ…!?…いや、私が怒る義理なんてないか…』

ごめんね。と彼女はまた涙を零す
俺の顔に涙が落ちたのに気付いたのか、涙を止めようと乱暴に拭う

「俺のことは気にするな。好きなだけ泣けばいい。それに折角描いた頬の模様も消えてしまうだろう」

『だ、だって…貴方に酷い事したのは、私なのに…!』

「先ほどの言葉だけで十分だ…っん」

ルナは言葉を遮って、唇を重ねる。一度だけではなく、何度も

『遠慮、しなくていいんだよね?』

「あぁ。恋愛など、遠慮していたら終いだぞ」

『じゃあ、ちゃんと、言う。貴方の場合、他の人を口説く事は商売だったり、作戦だったりするからとやかくは言えない。けれどもう、ギーヴに自分の思ってること言わないようにしている癖、治すから。だから…』

ルナは恐る恐る首飾りを取り出す
まだ拒絶が怖いのか、手が震えている。それを和らげるように微笑む

『私と…結婚、してください』

「あぁ。勿論だ。我が愛しき月の女神」

愛はそこに→←自覚なし

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