part 5 「不覚」 ページ6
「こーら。逃げないの。」
決死の逃走も意味をなさない。
そもそも学生時代から運動は苦手だったし、明らかに鍛えてるこの男に体力で敵うはずがない。１分も経たずに捕まってしまった。
「･･･攻めるのは早すぎたか。」
『は？』
「なんでもないデス。とにかく今度からはちゃんと周りの人に言ってくださいね。かわいいんだからすーぐ喰われちゃいますよ。」
彼はそう言うとがぶ、と手を獣が爪を立てるように握って、わたしの頭の上で閉じては開いてを繰り返した。その行動に驚いて目を見開いていると、常連さんはふと視線を合わせるように屈んでくる。わたしは咄嗟を目を逸らした。
「こっちは向いてくれないんですか？」
『･･･無理です。』
さっきから色々と情報量が多すぎて頭が追いつかない。痴漢されてないか心配してきたと思えば、危ないと怒られて。そのうえ自分を卑下したらもっと怒ってきて。しまいにはかわいいんだからとか言ってきて。なんだ。なんだこの人は。
『バイト、間に合わないのでもう行きます。』
「･･･まあいっか。じゃあ俺もあとで行きますね。」
ちらりと横目でその顔を見てみれば、いつもと同じの胡散臭い笑顔で。でも今日は何故かものすごく優しい目をしていて。
不覚にも少しだけかっこいいと思った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 27人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆん - そーめんさんの表現力天才〜！続き待ってます！お体に気をつけてくださいね…！ (3月2日 18時) (
レス) id: ec9d942a77 (このIDを非表示/違反報告)
処刑人 - はい、好き〜〜。続き待ってます。 (3月1日 22時) (レス) @page6 id: 7578fd3293 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：そーめん | 作成日時：2024年3月1日 17時
