好きだから ページ1
「おおっ‼」
みんなが注目する先には、満点のテスト用紙を持ったリオナ。えへへ、とかわいく笑う彼女に周りの男子がデレデレになっている。
……やっぱり、リオナは天才だ。
――リオナは木の葉のエリート一族の一つ、ミカド一族の末裔で、アカデミーではいつも成績トップの天才かつ秀才。
忍としての実力も高く、あのうちは一族のサスケくんが認めるほど。そして、何よりあのかわいらしい容姿に性格、全てを兼ね備えた彼女に惚れない人はいない。
「リオナちゃん、ほんとスゲーよ！」
「きっとアカデミーもトップで卒業だな！」
横で彼女を誉め称える声が、頭のなかで響く。
まるで、わたしだけその空間から取り残されたかのように。
…わたしなんかが意識できるような存在じゃないってことくらい、分かってる。
なんてったって、わたしと彼女では何も比べられるものがないんだもん。
……でも…リオナが来るまでは、わたしも同じだったんだけどな。
「ふぅ…」
誰にも聞こえないくらいの大きさでため息をついた。
――あと2点で、満点だったんだけど、やっぱりだめだなぁ。
「A!!」
そのとき、一つの意識だけが、わたしに向けられた。
見上げた正面には、テスト用紙をわたしに見せて、ニカっと笑う彼の姿。
「キバ…？」
「この前Aが教えてくれたトコ、出てたぜ！サンキューな」
「あ…う、うん」
それだけ言って、キバは自分の席に戻っていく。
……ん？それだけ？
それと同時に、リオナを囲んでいた男子達がわたしの元にやってきた。
「Aは何点だったー!?」
「え…見ろよ、A、98点だとよ！すげえ」
「まじで!?でもAもいつもすげーだろ！」
気が付くと、わたしの周りには人が集まっていた。
……なんだろ、これ。
状況が把握できないまま、ただ流れに流されていく感覚。
ただ、さっきまでの何とも言えない孤独感は、なくなっていた。
もしかして、キバ…わたしのこと考えてくれた…？
キバの方を見ると、既に机で居眠りしている。
また、寝てる。
くすっと笑みがこぼれた。
ーーキバは、小さい頃からわたしを助けてくれるよね。本人には、そんな気はないのかもしれないけど。
そんな彼に恋をした、わたし。
…あなたは、気付いてますか？
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作者名：ハルサカ | 作成日時：2015年8月13日 6時
