結んで、開いて、また閉じて。 (ページ8)

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雑（ネタバレ）ページ8

クロエ・エリュシオンは縛られていた。

「いいからこれ解いてくれません？」

「解いたら逃げるだろう？」

彼女はグッ、と文句を飲み込んだ。

「唐突だが…貴様、なぜ寝ない？」

「…梟は夜行性なんですよぉ～。蝙蝠もそうでしょう？…」

”蝙蝠”に呼応したか、スネイプのオニキスカラーの瞳が揺れた気がした。

「残念ながら貴様を縛っているロープは魔力を抑えるものでな、魔法は使えん」

「ず、随分と周到ですね…」

「我輩は使えるがな…

”クロエ・スリーズ・エリュシオン”？」

…クロエはギリッと歯軋りをして睨んだ。

「いつからそれを知っている？」

藍色の瞳は赤黒く変わる。長い黒髪の先の美しい夜空色は暁色になった。

「やっと本性を現したな、”音楽人形”」

「ッ、穢れた血に話しかけるつもりはないんじゃないか？…純血主義者の二重スパイ」

”穢れた血”。それは最悪の記憶で＿＿

幸せを奪った言葉。

彼女がはち切れるほどの魔力を発する。

縄はブチブチと千切れ、彼女は立った。

「もう帰る…今日の事は忘れてくれ」

”オブリビエイト”、彼女はそう唱えると、どこかへ行ってしまった。