理想的とは程遠く_sgi ページ4
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「あ、須貝じゃん!久しぶり!!」
「お、お前老けたなー」
「んだと」
学会にいた小学校の同期に思わず笑ってしまう。
全く変わらないその姿。
それは、俺の初恋のままだった。
「あれ、指輪じゃん!やば」
「えへへー、実は決まったんだよねー、結婚!」
幸せの絶頂。
正しくその言葉が似合いそうなその笑顔に、俺は思わず引きつった笑みを浮かべてしまった。
「良かったじゃん。お前なんか拾ってくれる奴がいて」
「1回殴らせろ」
「ちょ、ジョーダン!!」
この何も気にしない関係が心地良い。
そう言って、俺は想いを伝えることから逃げたんだ。
「でも、須貝にしては褒めてくれたね。ありがとう」
「お前が素直にお礼とか気持ち悪いんですけど」
「やっぱり変わらないなお前」
呆れたように思わず言葉が飛び出た彼女は、迷わず俺の傷を抉ってくる。
「須貝にも素敵な人が現れるといいね」
───────俺には、お前しかいないのに。
小学校からの初恋をずっと引き摺り、今でも好きだったそいつの幸せを知ってしまった。
「おお、ありがと」
“お前もお幸せに”
辛うじて繋げたその言葉は、微かに震えていた。
「…あの時、伝えていたら何かが変わったのだろうか」
1歩踏み出せなかった自分に憤りを感じる。
そして、迷わずあいつの未来を応援できない自分は多分最低なやつなんだ。
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