小さな楽しみ_k-chan ページ3
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─── 間もなく館林行、発車致します ───
ガタガタガタッとエスカレーターをかけ下りる音が響いた。
「すみませんっ!!乗ります!!」
「大丈夫ですよ。お気をつけて」
いつもと同じ時間の電車。
いつもと同じ客層だ。
「あの」
「…え」
男子校の俺からすれば、女子との交流なんて今は無いに等しい。
こんな夜遅くに電車に乗ってくる女子なんてそうそういないし、普通に覚えていた。
「太田高校ですよね、その制服」
「…え、はい。そうですけど」
俺がそう返答すると、“パッ”と顔色が変わった。
「あの!勉強!!教えてください!!……迷惑かな」
彼女が着る制服も、そんなに悪い学校のそれではなかった。
「いや…。迷惑ではないよ」
俺がそう言うと、花が咲いた様に笑った彼女はどこか輝いていた。
「ここはこうなるでしょ?」
「うんうん…あっ、じゃあこうすれば解ける?」
「お、せーかい。流石〜。」
「渡辺くんのおかげだよ」
くすりと上品に笑った彼女に思わず目が奪われる。
「今週もありがとう!助かったよ」
「俺でよければ言ってくれたら教えるよ」
「ふふ、頼ってばっかだなぁ」
毎週水曜日の帰り道。
彼女に勉強を教えることは俺の小さな楽しみだった。
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