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コンコンッと優しいノックの音がする。
はーいと返事をすればこんにちはって返ってくる。
それがたまらなく嬉しかった。
「それでね？そのパン見てね、子供がすっごい喜んでんの。ちょー可愛かった。」
「今流行ってるもんね、それ。」
あれから数日。仲良くなって、年齢も一つしか変わらないことが分かった。だから喋り方も呼び方も変わった。敬語をやめて、彼は僕のことを『翔くん』僕は彼のことを『智くん』と呼んだ。
初めて智くんって言った時に
「親子丼と同じイントネーションだね。」って笑われた。それでもイントネーションは変えない。その方が呼びやすかった。
智くんはパン屋で働いているらしくて、さっきの会話もそのお店での出来事だった。智くんはいろんなことを教えてくれた。
今日は石焼き芋のトラックが走ってたとか、綺麗な花を見つけたとか、外のことをたくさん教えてくれた。
本を読むだけで終わる人生だと思ってた。未来を描く地図なんてとっくに失くしたと思ってた。
そんな中で出会えた君。毎日来てくれるだけで幸せだと思った。
「それで…って、翔くんどうした？なんかあった？嬉しそうだね。」
「ううん。いつも通りだよ。毎日嬉しいんだよ。」
そう言ったら「なんだそれ。」ってまた笑われた。
貴方なんでそんなに僕の発言に笑うの。
聞こうと思ったけどやめた。笑ってくれるならそれで良いやと思って。
「まぁいいや。あー…翔くん。」
「どうしたの？」
「お母さんがさ、明後日退院するんだよ。」
「そう…なんだ。良かったね。」
素直に喜べない自分が嫌いになった。
だって、智くんのお母さんが退院したら、ここに来る理由もなくなる。智くんともう会えないんじゃないかって。
「でもね。俺まだ翔くんとお話いっぱいしたいから、休みの日…いや、毎日ここ来てもいい？」
断る理由がなかった。
「え、い、いいの！？というかいいよ！待ってる！」
あの時ね、そう言ってもらえてすごく嬉しかったよ。
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評価&お気に入りありがとうございます(o^^o)
拙い文章ですが、これからもよろしくお願いします！
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作者名：永遠-towa- | 作者ホームページ：
作成日時：2015年12月3日 18時
