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「薬があまり効いてないんです。このまま薬を続けても進行が遅れるのか分からない状態です。」
先生に母と一緒に呼び出されて聞かされた。
副作用が出ているのに効いていない？
信じられない言葉だった。
「翔、薬、どうする？私は続けてほしい。分からないってことは、助かる可能性もあるってことでしょ？」
「うん、でもさ…。」
もともと治る見込みがないものを治そうとすることがそもそも無理だったんだよ。
言いかけてやめた。なぜか智くんの顔が思い浮かんだから。
智くんになんて言おう。今日は定休日らしいから、早めに来ると言っていた。心の整理もまだついていない。
嘘をつくか？効いてるらしいよって。
でも智くんのことだ。すぐにそれが嘘だってバレてしまうかもしれない。変なところで勘がいいから。
服を洗濯してくるねって母は帰った。
こういうときに限って涙が出てこない。理由は明白だった。
悲しすぎたんだ。悲しすぎて涙なんて出ないくらいに。もっと智くんと居られると思って始めた。副作用だってしんどくても耐えてきたつもりだった。
しまいに、死ぬことが決まってたんだって、悲しい考えに辿りついてしまった。生きたいって思ったよ。病気が分かってすぐでは。
ただ、長い入院生活を経験していくうちに、もう良いやって諦めもでてきた。そんな中でやっと、もう一度『生きたい』って希望を持ち始めたのにこの結果だ。
「やっぱ無理だったんだよ…。」
「何が無理なの、翔くん。」
「…居たの？」
「さっき来たばっか。」
貴方影を薄くすることもできちゃうんだね。
「で、何が無理なの？翔くん、教えてよ。」
「別に何も…。」
「何もないわけないじゃん。すっごく悲しそうな顔してるよ？」
なんだ、とうとう顔にまで出てたのか。
「智くん。」
「なに？」
「ごめんね。」
「何が。」
「薬ね、効いてないんだって。」
言った途端に溢れ出た涙。
僕のバカ。なんでこんなときに涙が出るんだよ。
智くんが困っちゃうじゃないか。
それでも止まらない涙。止めようとすればするほど出てきた。
ごめんって言いかけた時だった。
不意に唇に感じた温もり。訳が分からなかった。
「ごめんじゃないだろ。翔くんは何も悪くない。」
智くんが僕にキスをしたって分かった。
その温もりと『何も悪くない。』これで全てが許された気がした。
「翔くん、言ったろ？俺も一緒に戦うって。」
その言葉にまた涙が流れた。
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作者名：永遠-towa- | 作者ホームページ：
作成日時：2015年12月3日 18時
