きみのて(バンビズ) (ページ28)

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「何かあったら呼んでね。じゃ。」
「ごめん、ありがとう。」

気を利かせてくれた相葉が部屋を出る。

何を話せば良いのだろう。
何て話しかければ良いのだろう。

そんなことに困ったのはこれで二回目だ。事故のときも困った。

「じゅん？」
「ん？なに？」

突っ伏しているから篭って聞こえる声。
まさか彼から呼んでくれるとは思わなかったから、ちょっと声が裏返った。

「ごめんね。」
「大丈夫だよ。俺もごめん。」
「なにが？」
「…黙ってて。」
「僕のためでしょ？ありがとう。」

うんって言葉は飲み込まれた。だってそうじゃない。少しは彼のためであったかもしれないけれど。

彼のこんな姿を見たくなかった。つまり、俺のためである。

「違う。」
「え？」
「俺が、俺が、翔のそんな姿を見たくなかっただけ。俺のためなんだよ、黙ってたのは。ごめん。」

翔の顔が上がった。怒っているかもしれない。表情が見えないことがこんなに怖いことだなんて知らなかった。知りたくなかった。

彼の顔が上がると反比例し、俺の顔は下がっていく。怒られたって仕方がない。嫌われたって仕方がない。自業自得だと。

冷たい言葉をかけられると思っていた。だけど、逆に温かさを感じた。

「しょ、」
「違うよ、僕のためだよ。泣かせたくなかったんでしょ？ごめんね、ありがとう。」

何を思っていたんだ俺は。彼は、翔は、優しくて温かい人じゃないか。