流れる季節の真ん中で(磁石) (ページ30)

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修学旅行が終われば次は三年生を送る会だ。俺たち2年は、卒業式の定番となってきた3月9日。指揮は俺、伴奏は翔ちゃん。

伴奏も指揮も息ピッタリだと先生に褒められ、俺と彼で頬を軽く染めながらハイタッチをした。

「翔ちゃん完璧じゃない」
「ふふ、まぁね」

____これが彼の最初で最後の送る会。

ふと頭によぎった思いを消し去るように頭を掻いた。

何を考えているんだ。まだ決まったことじゃないし、これから治るかもしれないだろう。

なんて無理矢理考え込むのも無理があって。

さっきまでの嬉しかった思いが途端に悲しい思いになってしまった。

「あと少しだね、送る会」
「うん」
「和、指揮間違えないでね？」
「翔ちゃんこそ、ミスしたら指差して笑ってやるんだから」

それはヤダぁなんて笑いながら歩く彼を見たら、胸がキューっと痛んでくる。今すぐにでも病院に殴り込みに行ってやろうかとも思う。早く薬作ってよ、翔ちゃんの病気治してよって。

なんて考えていたら隣に居た彼が居ない。と思ったら後ろで立ち止まっていた。

「翔ちゃ、」
「和」
「…ん？」

俺の言葉を遮って彼が呼びかける。

「ありがとうね」
「…何それ、変な翔ちゃん」

何だよそれ、最後の別れみたいなこと言うなよ。

お礼言われるなんて慣れてねーよ。

お礼なんていいからさ

「逝かないでよ」

その呟きは車道を走るトラックの音にかき消された。