流れる季節の真ん中で(磁石) (ページ15)

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あとから相葉先生に話を聞いたところ、翔ちゃんは先天性の心臓病らしい。それも重度の。学校には当然数えられるぐらいしか行ったことがないし、行事なんて知らないのに等しいということだ。

だったら何としてでも彼に修学旅行を味あわせてあげたい。確か修学旅行はオーストラリアだったはず。つまり異国の地。リスクは相当高い。そこで発作が起きても、対応するのが難しいからだ。

でもそこは大丈夫だと相葉先生誇らしげ。何でも、旅行には医師と看護師が1人ずつつくそうで、今年は相葉先生の担当だという。偶然にしてはできすぎだが、そこは神様も味方をしてくれたんだとでも思っておこう。

寝ている翔ちゃんが起きない程度の作戦会議。まず俺は毎日彼に会いに行ってあげる。そんなこと言われなくてもするつもりだった。Aさんもできるだけ毎日来るようにするそうだ。

そして班の話。修学旅行では班を作って行動する。もちろんそのうちの1人は俺だ。だが問題はそれ以外の人。心臓病なんて身近にある病気とは言い難い。それに、病気のせいでイジメを受けるなんていう話も聞いたことがないわけではない。

そこで班員には俺が説明するようにと指令を受けた。翔ちゃんにも、修学旅行が決まれば班員のことを説明する。

そして最大のミッション。翔ちゃんにバレないようにする。

バレてしまえば、万が一、富士山が火山しない限り大丈夫だと思うが、無理だった場合の彼の気持ちが落ちてしまう。最終自信喪失。そんなことはさせてはいけない。

まだ眠っている翔ちゃんをチラッと見る。夢の中にいるのだから、俺たちがこんなことを計画しているだなんて想像もつかないだろう。

「じゃあ、俺仕事に戻るね。和くん、翔ちゃんのことよろしく。」

うん、任せて。