捨て身の逮捕 ページ20
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生臭い匂いがする。目を開け、横を見ると、黒いゴミ袋がいくつも積み重なっていた。ぐったりしながら下を見る。
フーリッシュはかたく目を閉じている。意識を失っているようだ。一向に目を覚ます気配がない。
「フーリッシュ、大丈夫か?」
私は積み重なったゴミ袋の上をゴロゴロ転がり落ち、なんとか彼のとなりまで来れた。
手しか動かない私は、必死に語りかけるほか術がなく、大声で彼の名を呼んだ。
「フーリッシュ、フーリッシュ!起きてくれ!私は無事だよ、フーリッシュ!」
返事がない。最悪な考えが裏脳を横切る。
「まさか人間の私が無事のこの状況で君が死んだなんて言わないでくれよ・・・」
いくら彼に語りかけても、彼の黒く長いまつ毛は上がろうとしない。
「・・・ああ、そんな・・・」
私は悔いに目を閉じた。ひとり暗闇の中に閉じこもっていると───
ガツンッッ!!!
頭にひどい衝撃が走る。まるで鉄のようなものが勢いよくぶつかったような───。
「・・・!!」
ハッとして目を開ける。
目の前にはいつも通り無表情の彼。そんな彼にハァ、と安堵のため息をつく。
フーリッシュは素早く私を抱え上げ安全な場所へ移し、私の体に負荷がかからないよう、丁寧に座らせてくれた。
「怪我は?」
「ああ、ないよ」
「なら良かった。さあ、戻ろう。今頃ドンがジムを捕らえているはずだ」
「ああ、そうだな戻ろう・・・あっ」
「警部?」
「車椅子が───」
その後車椅子を取りに戻り、怪我だらけのドンのところへ戻ってジムを署に連行した。
「ドン、ありがとう。こんなに重傷を負ってまでフランツを───」
「気にするな。アイツを殴れて清々しかった」
「かなり重傷だ。メンテナンスを?」
フーリッシュが言う。
「ああ、一週間はかかるな。俺がいなくてうさぎみたいに死んでくれるなよ」
「寂しいわけがない」
「こいつの言うことはいつも反対言葉だ」
「はははっ」
この義兄弟を見ているとこっちまで和んでくる。ドンは私を振り返り、私に握手を求めた。
なんとか手を動かし、彼の手を握る。
「メンテナンスが終わったら、すぐ顔だしに行くよ」
「ああ、コーヒー入れて待ってるよ」
「そりゃお気遣いどうも。じゃあ俺はこれで」
ドンはヒラリと手を振り、薄暗い街を歩いていった。彼を見えなくなるまで見送り、フーリッシュを振り向いた。
「さあ、帰ろうか」
「ああ」
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クロユリ☆★(プロフ) - ここりどらすさん» わあ、嬉しいです!ありがとうございます(^^*) (2019年8月23日 1時) (レス) id: 0bca962c48 (このIDを非表示/違反報告)
ここりどらす(プロフ) - 好きです。8点入れさせていただきました。 (2019年8月22日 23時) (レス) id: af90c931db (このIDを非表示/違反報告)
クロユリ☆★(プロフ) - ぐうたら猫さん» ご報告ありがとうございます!これからも頑張ります! (2019年2月8日 18時) (レス) id: 0bca962c48 (このIDを非表示/違反報告)
ぐうたら猫(プロフ) - こんばんは。誤字があったので、ご報告します。『彼の感情』の後半、機械が機会になってました。修正と更新、頑張って下さい! (2019年2月8日 17時) (携帯から) (レス) id: e6816c78e0 (このIDを非表示/違反報告)
クロユリ☆★(プロフ) - 夜桜さん» わかりました!拝見させていただきますね! (2018年8月14日 19時) (レス) id: 0bca962c48 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クロユリ☆★ | 作成日時:2018年7月25日 13時