1 ページ1
空は、青く壮大で。雲ひとつない空はまるで自分はちっぽけだとでもいうようにどこまでも続いていた。隣には当たり前のように大切な家族の赤丸が居て。静かな森の中でひと眠りしていた。自然な香りが鼻をくすぐる。息を大きく吸い込むと、誰かの匂いがした。その匂いはだんだんとこちらに近づいてきた。この香りは嗅ぎなれている仲間の香り。
「んぁ？キバじゃねぇか。」
「よぉ。シカマル。」
思い通りの人物だった。俺は上体を起こして目の前にいる相手を見つめる。シカマルは俺の傍まで来るとその場に腰を下ろした。風に揺らめいて木々がざわめく。心地よい風が肌を掠めた。
「なんでこんなとこ居んだよ」
俺を横目に聞いてきた。
「お前こそ。」
「俺は静かなとこで寝たくてな。」
「何だ、俺と一緒じゃんか。」
ふーん、という相槌が聞こえたと思ったら横になった。大の字になって大空を見るシカマル。・・・なんだろうか、この感じ。淡々と過ぎていく時間が少し楽しく思えた。赤丸に目をやると静かに寝息をたてていた。俺も寝るかと再び横になる。
目を閉じれば睡魔が襲ってくる。疲れていたんだろうか。眠たい。またもや夢の世界へと引きずり込まれた。
暗い、暗い。悲しい、辛い。一人、暗黒、光がない、誰もいない。怖い。苦しい。息ができない。目が開かない。嫌だ、嫌だ。助けて。
「ば…キバ、おい！キバ！！」
「ん…」
目をパチリと開ける。なんだろうか、胸が熱く、焼けるように苦しかった。何かが目から落ちて行った。それは確認するまでもなく俺の涙だった。
「あれ、俺なんで泣いて…」
「…どうしたんだよ。悪夢でも見たか？」
悪夢…というよりは、ただひたすらに真っ暗だったことは覚えている。ただただ闇におびえて怖くて。
「真っ暗だった。」
「はぁ？真っ暗？」
「…嗚呼。それで、苦しくて、辛くて悲しくて。でも、よく分かんねぇ…」
俯きながらに伝えると、頭をわしゃわしゃとされた。
何すんだよ、と不満を言おうとしたが今は何だか安心出来て抵抗する気にもなれなかった。
「疲れてんだな。ゆっくり休め。」
「…おう…」
いつもより何倍も優しいシカマルの声に胸が苦しくなった。
それが何かなんて俺は知らなかったけれど、いずれ知るハメになる。
でも、今は知らなくていい。
よく分からないけれど、そう思った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：いーさん | 作成日時：2016年10月25日 0時
