死にたがりの男装少女は死んで文ストの世界へとトリップしたようです。【青の時代】 (ページ37)

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森「中也君。君は最初に太宰君達と会ったとき、《荒覇吐》について質問したそうだね？──《荒覇吐》とは何者だい？」

と、森が中原に《荒覇吐》の正体について聞く。

《荒覇吐》について、ポートマフィアは何も知らないに等しいと言っていい。

ひとつでも情報が欲しいと言ったところか。

森「こちらでも軽く調べたよ。

荒覇吐というのは、伝承上にある神の眷属だ。
曰く脛に佩く脛巾の神、日本神話以前の古き神。

ただ、あまりにも古いために、その正体は判然としない。本当はどんな字を書くのかも判らないようだ。

だから土地によって勝手な伝承がつけ加えられて、色々な"アラハバキ神"の類型が語られてる。」

中「神なんてモノの存在を信じるのかよ？」

森に対して中原は莫迦にしたようにそう云った。

森はそれに対し、いいや。私は見たモノしか信じないと否定を述べる。そして、と言葉を続ける。

森「そして君も見た通り、先代の姿をした人物が映像に映っていたのは動かしようのない事実だ。」

そして森はその双眼で中原を見る。

森「君が《荒覇吐》について調べていたのは偶然ではない。恐らく私達と同じ噂を耳にし、真相を追っていたのだろう？」

と。中原はしばらく躊躇するように室内を見回していたが、やがてホントかどうかは判らねえと前置きを言い、口を開いた。

中「流れ者が多い土地だ、噂の出所も突き止めようかまねえ。だが…あんたら、擂鉢街がどうやってできたか、聞いたことあるか？」

中原の意外な質問に森は擂鉢街？と、眉を持ち上げた。

森「あれは爆心地にできた街だろう。大戦末期、原因不明の大爆発が起き、地面ごと何もかも吹き飛んだ。その跡地にできた街だが──」

そんな擂鉢街についての誰でもが知っているような情報。

森はその情報を思い出すように口に出した。

中「その爆発の原因が《荒覇吐》なんだとよ。」

森の言葉を遮るように云った中原。

そして顔を歪ませた。

中「《羊》の中には噂好きな奴が多くてな。」

中原の仲間曰く、六年前、捕虜になった海外の兵士が、租界近くにある軍の秘密施設で拷問を受けていたらしい。

そして、拷問官は拷問の最中誤ってその兵士を殺してしまったそうだ。

けれど、死んだ兵士は怒りと恨みから《荒覇吐》を呼び起こし、黒い炎を纏って蘇った、と。