55、今の自分に出来ること ページ8
・
『誰か……くる』
Aの耳が拾ったかすかな音は、数人の足音だった。
直哉の仲間かもしれない。
もしそうだとしたらお兄ちゃんが……
そう考えると、速かった心臓の鼓動がさらに跳ね上がる。
『どうすればいい…今の私にできることは…』
「___ちゃん、Aちゃん。私だ、太宰治だよ」
小声で話しかけてきた人物にビクリと肩が跳ねる。
「だ…太宰さ、ん?どうしてここに?」
直哉に気づかれないよう、Aも小声で答える。
「説明は後、
今から君をこの部屋から出すために、谷崎くんの異能を使う。
雪が降ってきたら部屋を出るんだ」
「でもお兄ちゃんが…!」
その時彼女の周りに、はらりはらりと雪が降ってきた。
Aは恐る恐る立ち上がると、足音を立てないように部屋を出る。
そこには、太宰と谷崎、敦、与謝野が待っていた。
「怪我はないかい?」
与謝野に問われ、首を縦にふる。
「大丈夫です。それより、私が抜け出したら直哉に気づかれるのも時間の問題ですよ…どうしたら」
その言葉を遮るように、谷崎が少女の肩に手を置いた。
「さっきまで寝ていた場所、見てご覧」
「…!」
言われた通り見てみると、そこには"自分が仰向けで寝ている姿"があった。
「もしかして…谷崎さんの異能って」
谷崎の顔を見れば、彼はニコリと笑って頷く。
「僕の異能は『雪を降らせた範囲をスクリーンに変えること』が出来る」
「Aちゃん、君は今すぐ探偵社に戻るんだ。異能を持たない君がここに居るのは危険すぎる」
太宰が真剣な眼差しで告げる。
その言葉を、Aは突っぱねた。
「嫌です。
たった一人の家族なんです、見捨てるなんて…出来るはずありません」
自分にも何か出来ることがあるはず。
このまま逃げるなんて嫌だった。
179人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぺぽん(プロフ) - めろ。さん» コメントありがとうございます、そう言っていただけて飛び上がるほど嬉しいです!これからも楽しく読んでいただけるように頑張りますね🙌 (2023年1月15日 5時) (レス) id: 83a944f022 (このIDを非表示/違反報告)
めろ。(プロフ) - 国木田くんの夢小説あまり見かけないのでこの作品に出会えて嬉しいです!!この作品大好きなのでこれからも更新頑張ってください!応援してます!!!! (2023年1月14日 23時) (レス) id: 8e324f8e54 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ぺぽん | 作成日時:2022年12月18日 22時