89、女の馬鹿力は強い ページ42
「ゲホッ…ゴホッ…!」
自分も溺れそうになりながら、なんとか川から引き上げた。
と言っても、18歳の少女が身長180センチもある成人男性を完全に引き上げるのは明らかに難しかったため、太宰の下半身はまだ川に浸かったまま。
上半身だけ岸にあがっている姿は、全身がずぶ濡れのことも相まってゾンビのように見えた。
『でも…太宰さんって普通に顔整ってるよなぁ』
まだ目覚めない太宰を横目で見ながら濡れたワンピースの裾をぎゅっと絞る。
『自 殺癖が無ければもっとモテそうなのに』
勿体ない男だ、と心のなかで呟く。
全身びしょ濡れになった所為で自慢のふわふわ感が皆無になった髪も絞っていると、
「……しろ」
小さく声が聞こえた。
「あ、太宰さん起きましたね」
ところで「しろ」とは何だ?
そう思い聞き直そうとしたとき、丁度その意味を理解してしまったAは一気に表情が死んでいく。
「太宰さん…あなた今なんて言いました?」
「え!?いや、何のことだい?」
「とぼけないで下さいよ、『しろ』って言ったの聞こえてましたからね」
「あ、それは!その!!」
慌てて川から這い出て否定する太宰を、これでもかと見つめるA。眼力が尋常じゃなかった。
ゆっくりと、それでいて滑らかに、少女の桃色の唇が動く。
「…私のパンツ、見たでしょ」
「ち、違う!さっきのは事故なのだよ!目を開けたら視界に入ってきてしまって!!」
「言い訳するな!!」
大声と共に、力強い平手が太宰の頬にヒットした。
「ブフォ!」
女の馬鹿力は強い、それは少女であっても同じこと。
平手をまともに喰らった太宰は吹っ飛び…
ドボンッ
再び川に沈んだ。
ハッと我に返ったAは静かに呟く。
「…私、悪くない」
さてと、気を取り直して駄菓子を買いに歩き出したA。
太宰を連れ戻すミッション?そんなの知らない。
数分後、川の亡霊の如く追いかけてきた太宰は暫く少女に無視されたそうな。
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ぺぽん(プロフ) - めろ。さん» コメントありがとうございます、そう言っていただけて飛び上がるほど嬉しいです!これからも楽しく読んでいただけるように頑張りますね🙌 (2023年1月15日 5時) (レス) id: 83a944f022 (このIDを非表示/違反報告)
めろ。(プロフ) - 国木田くんの夢小説あまり見かけないのでこの作品に出会えて嬉しいです!!この作品大好きなのでこれからも更新頑張ってください!応援してます!!!! (2023年1月14日 23時) (レス) id: 8e324f8e54 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぺぽん | 作成日時:2022年12月18日 22時