79、これからもずっと ページ32
「なに?」
「…本当のことをずっと隠していただけでなく、Aに冷たい態度を取ってしまったこと、謝らせてくれ。……ごめん」
国木田は頭を下げた。
自分の拳をギュッと握りしめて、ただ頭を下げた。
許してもらおうとは思わない。
誤ったことをして、彼女を傷つけたことは消えないのだから。
「…」
どのくらいの間そのままの態勢でいたのだろう。
国木田にとっては、ものすごく長い時間に思えた。
「分かったから、顔上げて」
Aの感情の見えない声に、恐る恐る顔を上げる。
瞬間、暖かい温もりが体を包んだ。
Aが自分を抱きしめているのだと気づくのに少し時間がかかった。
驚きと困惑で国木田はピシリと固まり、目を丸くする。
「私も、お兄ちゃんの立場だったらきっと同じことしちゃうと思う」
Aは国木田を抱きしめながら優しい声で言う。
「血がつながってなくても、私にとっての家族はお兄ちゃんだけだよ。私は、これからもずっと、国木田独歩の家族で妹!」
顔を上げたAは国木田を見てニッコリ笑った。
それはいつもの大人びた笑顔ではなく、年相応の明るい笑顔だった。
「ッ……すまない、本当にっ…悪かった…」
目の奥ががじわりと熱くなって視界が歪んでくる。
奥歯を噛み締めて溢れ出てきそうなそれを堪えていると、ポン、と肩に手を置かれた。
「国木田君。今日くらいは自分の心に素直になれば?」
そんなセリフ、いつもは絶対言わないくせに。
何も考えてなさそうなのに実は誰よりも人の心を読んでいて、ふとした時にこうやってズルい言葉をかけてくる。
これだから太宰は好かんのだ。
「煩い……この唐変木め」
暫くの間、公園に国木田のすすり泣く声が静かに響いていた。
179人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぺぽん(プロフ) - めろ。さん» コメントありがとうございます、そう言っていただけて飛び上がるほど嬉しいです!これからも楽しく読んでいただけるように頑張りますね🙌 (2023年1月15日 5時) (レス) id: 83a944f022 (このIDを非表示/違反報告)
めろ。(プロフ) - 国木田くんの夢小説あまり見かけないのでこの作品に出会えて嬉しいです!!この作品大好きなのでこれからも更新頑張ってください!応援してます!!!! (2023年1月14日 23時) (レス) id: 8e324f8e54 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ぺぽん | 作成日時:2022年12月18日 22時