検索窓
今日:2 hit、昨日:4 hit、合計:151,528 hit

*30. ページ32

マサイside


.


全てに納得がいった。

何故菊子さんばかりが、いつも俺の家に料理を届けに来てくれるのか。
何故Aちゃんはあり得ない量のバイトを掛け持ちしていたのか。

何故、両親と暮らしていないのか。

俺が言葉を発そうとすると、カーテンの側に気配を感じた。

『おばあちゃん来たよ〜、って、マサイさん!?来て下さってたんですね』
マサイ「あぁ、うん……Aちゃん、」

前の話があれなだけに、今元気に彼女と話せる気がしない。今の彼女にとっても俺ら(Fischer's)は大切な存在だろうと、そう菊子さんは言ってくれたけれど。
晩ごはんを作ってもらったり、動画に対して視聴者さん目線でアドバイスをくれたり、実際は俺らは何かにつけて“してもらっている”だけではないのか。

『マサイさん?……おばあちゃん、何かあったん?二人とも暗いけど……』
「A、ごめんねぇ。マサイさんなら、話してもええかと思って……あんたの事、話したんよ」

そう告げられると、Aちゃんの顔は一気に硬い表情になった。自分の事、と言われて真っ先に思い浮かんでいるのはきっと、今さっき俺が聞いた、辛い辛い過去だろう。

『そう、なんや。いや別にええんよ、おばあちゃん、ただ、マサイさんが、そんな暗い話聞いて、嫌じゃなかったかなぁって……』
マサイ「嫌?そんな訳ねぇじゃん!」

つい声を荒げて立ち上がる。椅子がひっくり返り、カーテンの外もシンと静まってしまって、その静けさで我に返る。やばい、俺いろいろとやらかした。

言葉を発しにくくなった空気の中で、Aちゃんが動いた。

『……おばあちゃん。来て早々やけど、私ちょっと外出てくるね。
マサイさん。よければ少し、お時間頂いてもいいですか?』

その微笑みは、苦しそうだった。
俺は頷いて、今度こそ音をたてずに席を立った。


.

*31.→←*29.



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (116 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
364人がお気に入り
設定タグ:Fischer's , マサイ , YouTuber
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

いちごだいふく(プロフ) - hina4428さん» コメントありがとうございます!気になるところで長い間止めてしまっていました……ただいま更新しましたのでぜひ読んでいただければ嬉しいです! (2019年8月27日 16時) (レス) id: 619c5266ec (このIDを非表示/違反報告)
hina4428 - きになるっ!…続きがっ…気になるぞぉぉぉぉぉ!!!更新待ってます! (2019年8月15日 21時) (レス) id: bd94ce952c (このIDを非表示/違反報告)
いちごだいふく(プロフ) - めろこさん» コメントありがとうございます!そしてなんて嬉しいお言葉……!これからも頑張ります! (2019年5月29日 20時) (レス) id: 0069fa8620 (このIDを非表示/違反報告)
めろこ - いちごだいふくさまおかえりなさい。最近読み始めてまた更新して下さうことを楽しみにしておりました。これからの更新楽しみにしております! (2019年5月28日 22時) (レス) id: 9c37dcd8ea (このIDを非表示/違反報告)
いちごだいふく(プロフ) - ハルキさん» コメントありがとうございます!!嬉しい限りです、これからも頑張ります!(^^) (2019年3月24日 11時) (レス) id: 0069fa8620 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:いちごだいふくlike | 作成日時:2018年12月5日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。