Harmonia【短編集】 (ページ8)

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ついに、その日がやってきた。
前日の夜、私は全てに別れを告げて彼と共に朝を迎えた。

「ねぇ……今な…」

「嫌、ずっと一緒って約束したじゃないですか。」

「そうだね、うん。」

「それに……離す気ないですよね。この体制。」

「そりゃ、ね。」

王座の上でそらるに抱きかかえられている状態。
………ちょっとだけ、恥ずかしい。
まさか勇者一行が来てもこの状態なのかな？

「…ねぇ、そらる。」

「ん？」

「戦うときは離してくれるよね？」

「離したくないけど…Aを危険な目には合わせられないしね。」

「そっか。」

「それとも、魔王らしくした方がいいかなぁ…囚われの姫君みたいな感じで。」

「お任せします？」

まぁいっか、このままで。なんて気だるげに言っているそらるを見て
あれ、もうすぐ勇者来るんだよね？なんて思ってしまう。
…倒される気はさらさらないみたいだけど……

そんな話をしてからすぐだった。
城の中が騒がしくなり、勇者一行が来たことが分かった。
……そして、それからすぐだった。

「ここにいたか！魔王……！」

「…へぇ、結構いい顔つきになったじゃん。少しは…楽しめる、かな。」

「なんで……お前が…！？それに、なぜ王女様を！」

「改めて自己紹介してあげる。俺はそらる、当代の魔王。王女は攫ってきたんだよ。」

俺のものにしたくてね。
そう、私には見せたことのない顔と聞いたことのない声色でそらるは言い放った。
それを聞いて、うれしく感じてしまう私はどうしようもなく魔王に堕ちてしまってるみたいだ。

「なっ！？王女様を離せ！！」

「…嫌だね。」

「…ならばお前を倒して、王女様を救い出す！」

「勝手にそう思っとけば…なんて言いたいけど。」

Aに関しては話が別なんだよね…そう言いながらそらるはゆっくりと立ち上がった。
手に持っていた杖で床を叩いたと思ったら、ふわりと何かに包まれた…
私を巻き込まないためにと、そらるが結界を張ってくれたらしい。

「Aだけは……誰にも渡さない。」

「魔王、今こそ俺は滅ぼしてやる！」

「…年季が違うよ、背負ってるものの重さもね。」

白い光の風と、黒い闇の波がぶつかり合う。
そらるも眷属を呼び出して、勇者一行との戦いが始まった。
…私は、それを見守っているわけではない。
むしろ、そらるの時間稼ぎの間にやらないといけないことがある。

「…大丈夫、きっとできる。」

この世界に平和を、そして…私たちに始まりを。