心中系浮気症の恋人、予約済です

ドキドキ（恐怖）。 ページ16

「却説、Aちゃん！今日は善い処に連れていってあげようじゃないか‼」
「あ、はい」
相手がテンション上がる程此方はテンション下がるって云う現象。

と云う訳で、現在歩いているのは路地裏。
「暗くて狭い処ってドキドキしないかい？」
「いえ全く」
暗くてドキドキするなら雪隠(トイレ)でもドキドキする事になるだろう。

〜♪

太宰さんの携帯電話？から音楽が流れてきた。遠く離れた相手と話せる魔法の様な道具だ。

…歌の中にうっすら心中とか云う単語が聞こえたような。

太宰さんがカチャッと釦(ボタン)を押す。

「もしもし、わた…そんなに怒鳴らないで呉れ給えよ。――え、もう？了解」
ピッと再び釦を押して、携帯電話を仕舞う太宰さん。

「Aちゃん、済まないが同僚から呼び出しをくらってね。暫くの間此処で待ってて呉れるかい？…何、直ぐ戻るさ」

日の当たらない、不気味さすら漂う静寂の路地裏。

…暗くて狭い処ってドキドキするよね。

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