恋人同士【神谷カルロス俊樹】 (ページ5)

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第5話ページ5

*

初デートは緊張して寝不足になると
よく少女漫画で見たりするけど
私は違うようで
ぐっすり眠ってパッチリ目が覚めた。

おかげで肌の調子はいつも以上に良く
大人びた神谷くんの隣を歩いても恥じない程度に
軽く化粧を施す。

普段一つに纏めているだけの髪も
今日は姉のコテを借りて慣れない手つきで
毛先を少し巻いてみた。

そして、昨日買ったばかりのワンピースを纏ったら
鏡の前でクルリと回ってみる。

変じゃないかな…？

似合っているか
店員さんにも何度も聞いて買ったけど
やっぱり神谷くん本人の口から聞くまでは
不安で、鏡の前を通るたびに
鏡のなかの自分とひたすらにらめっこ。

デート15分前
【これから迎えに行く】とメールが来た。

最終確認として部屋を出る前に
もう一度鏡でチェック。

…よし。

緊張で少し汗ばむ拳を握りしめて
部屋を出る。

そして14時ちょうどにインターホンが鳴った。

「お、お待たせしました！」

「待たせたのは俺の方だけどな」

そう言って笑う神谷くんは
いつも通りなはずなのに
私服のせいか、いつも以上にセクシーで
眩しくて目眩が…。

「よく似合ってんじゃん。可愛い」

「！」

「そのワンピース
俺のために買ってくれたんだろ？」

「え、とっ…」

「値札付いてる」

「え！！！？」

「嘘だよ。俺の注意を聞かなかった罰」

ポカンと口を開けた私に神谷くんは言う。
「気合い入れすぎんなって言っただろ？」と。

「あ…」

思い出して顔を赤くする私に
神谷くんはニヤリと笑うと

「さてと…」

私に大きな手を差し出した。

「この手、とったら帰せなくなるかもしれねぇけど？」

悪戯っ子のような神谷くんの手に
自分の手をそっと重ねる。

「そんなあっさりとっちゃうんだ」

「神谷くんのこと信頼してるから」

「あーあ。ここでそういうこと言っちゃう？」

神谷くんはわざとらしく肩をすくめると
戯けたように笑って
私の手を握り歩き出した。

「Aちゃんはどっか行きたいとこある？」

「え？あー…」

服のことばかりで、デートなのに行き先を考えてなかったことに今更気づく。

「その顔は何も考えてなかったって事でいいよな？」

「……はい。すみません…」

「別に謝ることじゃねーよ。
俺のためにオシャレして来てくれただけで充分だから」

＂俺のために＂と、強調されて
恥ずかしいけど
実際そうなのだから訂正はしない。

「俺が行きたい所でもいい？」