恋人同士【神谷カルロス俊樹】 (ページ4)

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第4話ページ4

*

サラサラと流れるような告白に
頭で考えるより先に頷いた私だけれど
神谷くんに流されてしまったわけじゃない。

かといって、彼を好きなのかと聞かれれば
すぐにはい、と返事が出来る自信が
あるとは言えないのだけど。

初めて神谷くんと向き合って以来
無意識に彼を目で追ってしまうくらいに
意識していることは事実だ。

クラスメイトから恋人という関係になったけど
教室での私と神谷くんの立ち位置が変わることはなかった。

私は教室の隅にいるのが嫌いじゃない。
極力目立たず、学校生活を送るにはちょうどいい。

それを神谷くんもわかってくれているようで
教室では必要以上には私に近付かない。

それでも、目が合えば笑ってくれるし
すれ違う際に一瞬だけ手に触れてくれる神谷くんに
ドキドキさせられっぱなしで
神谷くんとの距離が近くに感じるようになった。

「明後日の土曜、午後から空いてる？」

日が暮れないうちに帰ろうと思ってるのに
最後まで練習を見学していた私を
この日も神谷くんが寮から歩いて15分もかからない
家まで送ってくれている時だった。

「練習が午前で終わるからさ
その後になるんだけど、二人で出掛けたいなって」

「それって…」

「そ。デート、しねぇ？」

〝デート〟

恋愛初心者の私にとってその響きに
少なからず気恥ずかしさを感じつつも
心は浮き立つ。

デートは明後日。

神谷くんを見送って、ただいまもろくに言わず
忙しなく階段を駆け上がりクローゼットを漁る。

デートって何着ていけばいいんだろ。

初めて私服で会うんだから
少しでも可愛いと思ってもらいたい。

スカート？ワンピース？て、私持ってたっけ？

これは、明日放課後にでも買いに行くしかない…。

「今日は見て行かねーの？」

翌日の放課後、学校を出て
野球部のグラウンドとは逆方向に歩き出すと
神谷くんに声をかけられる。

「うん。ちょっと用事があって…」

勝負服を買いに行ってきます、なんて
恥ずかしすぎて言えなくて言葉を濁してみせるけど

「明日、2時くらいに迎えに行くから」

「うん。ありがとう」

「それから…」

「…？」

「あんまり気合い入れすぎんなよ」

「え？」

「帰せなくなるから」

「────っ！！？」

悪戯な笑みを浮かべる神谷くんに
図星を突かれ顔を真っ赤にする私。

どんなに誤魔化そうとしても
神谷くんにはお見通しで弁解の余地もなく
「気をつけて帰れよ」と、行ってしまった。