キミの一番近くで【御幸一也】 (ページ7)

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「俺の球は気持ち悪くねー！！」と
投げながら何度も否定する沢村くんを

「はいはい。しつけぇぞ」と軽くあしらう御幸くん

「Aー！何してんの？
アンタはそっちじゃなくてこっちでしょ！」

向こうのベンチ近くにいるさっちんに呼ばれる

「あっ！ごめん！！
…じゃあ、そろそろあっち行くね？」

そう言うと、沢村くんは首を傾げた

「あっち？」

「うん。あっちのベンチのスコアラー任されちゃって…」

2 , 3年生のいるベンチを指して言えば
沢村くんはムゥと眉を顰めた

「ということは、アンタ敵だったのか！！？」

て、敵…？

「俺の投球を見てたのは、この試合では敵である先輩たちに俺の情報を流すためで…」

「何わけのわかんねぇこと言ってんだよ…？」

怪訝そうな視線を私に向ける沢村くんに
御幸くんが呆れたような笑みを浮かばせる

「えっと…」

「Aちゃん、
こいつの話の半分は流していいから」

「とにかく、監督に沢村くんの実力を見せるチャンスだよ！
試合中、声援は送ってあげれないけど頑張ってね！！」

そう言ってグッと胸の前で拳を握ると

「頑張りやす！！」

沢村くんはビシッと敬礼のポーズを取った

そうして試合が始まるものの
肩をつくって準備万端な沢村くんだけど
なかなかマウンドには上がれず

やっと出てきたと思えば、ライトの守備についていた

そんな中、昨夜先輩たちのいる食堂で

「ここにいる誰にも打たせるつもりはない」

と宣言したと聞いた降谷くんがマウンドに上がり
たった1球で一軍昇格を決めてしまった

とんでもない子が入ってきたなぁ…！！

降谷くんの投球により
先ほどまでの勢いが止まった2 , 3年生チームに対し

縮まらない点差に臆することなく元気な様子を見せる沢村くんが振り逃げで出塁

1年生チームから初めてランナーが出た

だけど代わったばかりのノリくんの球を
バットに当てることもできず二者連続三振

せっかくランナーが出たのに繋ぐこともできずに
このまま終わってしまうんじゃないかと思っていると

「すみません！
メンバーチェンジお願いします！代打、俺！！」

木製バットを手にしたピンク色の髪の可愛らしい子が出てきた

あれ？誰かに似てるような…？

それから、突然の代打宣言をした子と沢村くんの走塁により1点を返し

落ちていた1年生ベンチの雰囲気が
やっと良くなってきたと思えば

「両チーム整列！！」

監督が試合終了と、整列するよう促した