キミの一番近くで【御幸一也】 (ページ4)

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「どう？今年の1年？」

「豊作みたいですよ？東条くんと金丸くんは松方シニアでベスト４までいったとか」

倉庫に道具を運びながら新入部員の話をする貴子先輩たちの横で

「んー…」

私は一人顎に手を当てて唸っていた

「A、どうかした？」

さっちんが私の様子を伺うように視界から顔を覗かせる

「うーん。昼休み終わって教室戻ったら
机の中にこれが入ってたんだよね…」

ポケットから1枚の紙切れを取り出すと
3人が興味深くそれを見た

「何これ？…【許さない】って？」

「脅迫？A、アンタ何したの？！」

「何もしてないよ！！差出人すらわかんないし…」

怪訝そうな目を向けられ、私は必死に首を振る

「そーいえば、昼休みにあの曽根くんから呼び出されたらしいじゃん？」

思い出したように言った唯の言葉に
さっちんがニヤリと笑った

「もしかしたら、曽根くんのファンの子からかもよ？曽根くんがAに告白したってもう噂になってるから当然ファンも黙ってないでしょ」

もしそうだとしたら
告白されただけでこんな紙切れが届くなんて
とんだ迷惑でしかない。

あんな目に遭ったというのに
まだ波乱は止まないのだろうか…。

「それで？Aは告白受けたの？」

「いえ。曽根くんのこと好きじゃないし、第一まともに話したこともなかったですからお断りしました」

そう言うと、唯とさっちんに口を揃えて
「勿体無い！！」と言われてしまった

「そんなこと言われたって…」

何故か責められる形になって、肩をすぼめていると

「きゃぁああ！！」

悲鳴と共にたくさんのボールが飛んできて
あちこちにゴロゴロと転がった

「やだぁ…」

「またアンタ春乃ー！」

新米マネージャーの春乃ちゃんが
今日も失敗して貴子先輩たちに怒られてしまい

こっちはいいから、ドリンク作ってきてと言われ
背中を小さく丸めて行く姿に

去年の自分と重ねて見えて何だか放っておけなくなった私は

「私も行ってきます！」

一言置いて、春乃ちゃんを追った

「迷惑ばかり掛けてすみません…」

ドリンクを作っている最中
隣に立つ俯いたままの春乃ちゃんが謝る

「気にしなくていいよ！今は失敗ばかりかもしれないけど、慣れれば大丈夫だから！！
私も最初は失敗ばかりだったけど…今もしてるけど、なんとかやっていけてるからさ」

そう言って笑いかけると
さっきまで涙ぐんでいた春乃ちゃんが
「はい！」と、小さく笑ってくれた