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# 24 ページ24

*



Aちゃんを残し寝室から出た俺は
ドアの前にズルズルと座り込み、深く息を吐いた


なにが “ 鳴の大事な幼なじみ ” だよ?

なにが “ 俺たち野球部のマネージャーだから ” だよ?!


なんでたった二言が言えねぇかな…。

つーか、鳴のためになんで俺が行動したりするんだよ。


「鈍すぎだろ…」


守りたい。

そう思うのは “ 好き ” だからに決まってんだろ…


倉持に話したら
情けないってドヤされるんだろうな…。

なんて思いながら
俺は立ち上がって静かにリビングに戻った





翌朝、俺は朝練に間に合うよう早く起きて
お粥を作ってから部屋を出るようとすると


「御幸くん…」


起こしてしまったのか
寝室から出てきたAちゃんが
玄関まで来た


「おはよ。朝練あるから、そろそろ寮戻るな」

「うん。…昨日は本当にありがとう」


昨夜あれだけ苦しそうにしていたAちゃんの笑みに、安堵するもつかの間

Aちゃんは俯いてしまう


「お粥作ったから、ちゃんと食って
今日は学校休んでゆっくり寝ろよ?」

「うん…」


そして、ドアに手を掛ければ
Aちゃんに服の袖を掴まれた


「…Aちゃん?」


顔を覗き込みながら名前を呼ぶと
Aちゃんはハッと顔を上げてから
慌てて俺から手を離す


「ごっ、ごめん!なんでもない!」


熱のせいかもわからない真っ赤に染めた頬に
俺は無意識の内に手を添えていた


そんな俺を
Aちゃんは潤んだ瞳で見上げてきて
俺は息を飲んだ


…っんな目で見るなよ。


沈黙のままお互い目をそらせずにいると
不意に、ポケットに入ったケータイが鳴った


ケータイを確認すれば
倉持からで、朝練に遅れるなよ。という内容だった


「…朝練終わったらメールするから」

「えっ?」

「じゃ、行ってくるな?」


目をぱちぱちさせるAちゃんの頭をポンっと叩いて俺は部屋を出た



きっと心細いんだろう。

自分以外、誰もいない部屋に一人きりだから。

だけど誰かに甘えて迷惑をかけたくない
その思いが強くて素直になれない。


熱があると余計に感じてしまう寂しさは
俺にもよくわかる…


本当はまだ傍にいてあげたかったけど
俺が練習を休んでもAちゃんは絶対喜ばない


ならせめて、メールや電話で少しでも寂しさを紛らわせればと思ったんだ



寮に帰ると倉持が待ち構えていて
昨夜のことを詳しく尋ねられ
渋々話せば、鼻で笑われた


まだドヤされた方がマシだったな…。

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設定タグ:ダイヤのA , 御幸一也   
作品ジャンル:恋愛
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作者名:あんず | 作成日時:2015年3月29日 2時

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