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# 33 ページ33

*


放課後、私は御幸くんの部屋へ行く前に
近くのコンビニに足を運んでいた。


お粥は寮母さんがつくってくれてるし…
熱のときはゼリーとか食べたくなるよね。

冷えピタも買っておいた方がいいかな?


なんて、御幸くんのことを思いながら
彼の喜ぶ顔が見たくて
必要以上に買い込んでしまった私は
大きく膨らんだ袋を手に、寮へ向かった



早く御幸くんに会いたい。

私が熱を出した時、彼がしてくれたように
私も御幸くんの傍に居てあげたい。

それで、御幸くんの風邪が治ったら、伝えたるんだ

自分の気持ちを。


その一心で、歩く速さが自然に早まった


あと少し…もう少しで御幸くんに会える。



すると、寮が見えてきたと同時に
前方に、誰かが壁に持たれているのが見えて
私に気付くとこちらに向かって歩いきだす


その人が、私の知らない誰か
もしくは友だち、野球部の人だったら

私は駆け足のまま寮に向かっていただろう

だけど、その人が誰かとはっきり見えた途端
私は立ち止まる


“ 止まる ” というより、足が勝手に止まってしまった


その人との距離が縮まるにつれて
冷えた汗が背中を伝う



「…待ってたよ。深沢」

「そっ…曽根、くん…?」


待ってたって、どういう意味?

と、口を開ける前に曽根くんは言う



「俺、許さないって何度も忠告してるよな?」


そう言ってポケットから
くしゃくしゃになった紙切れを何枚も取り出して
それを私に見せる

その紙切れには【許さない】と書かれていた


それは全部、私が捨てたはずの紙切れだった


「俺に自分のことを好きにさせたくせに
俺のこと拒否して、恥かかせて、傷付けて…
自分だけ幸せになろうとか考えてるお前が悪いんだ」


あの嫌がらせは、やっぱり曽根くんだったんだ



「忠告してもわかんねぇなら
どういうことか、教えてやるよ」


そう言って、私の腕を乱暴に掴む曽根くんの目は
正気ではなく狂っているように見えて

恐ろしくて、怖くて…

その手を思い切り振り払うと
身を翻してその場から逃げた


走りながら、後ろを見れば
曽根くんが追いかけてきていて



涙が視界を歪ませ、腕で拭い
すぐそこの交差点を曲がろうとした時



パッパァーーッ



「えっ…」



気付いたときにはもう遅くて


クラクションが鳴り続け
急ブレーキがうるさく響く中で



最後に、私は呟いた




御幸くんが大好きです。




と…

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設定タグ:ダイヤのA , 御幸一也   
作品ジャンル:恋愛
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作者名:あんず | 作成日時:2015年3月29日 2時

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