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「……ん…?…あれ?」
視界がぼんやりとしているなか
夢から現実へと意識を引き戻される
さっきまで確かにAちゃんと一緒にいたはずの俺は、瞼を開けると寮の自室のベッドで寝ていた
「…やっと目ぇ覚めたか…」
声がした方へ視線を移せば
呆れたような、少しホッとしたような
微妙な表情を浮かべる倉持が床に座り込んでいる
「…Aちゃんは?」
「ったく、第一声が深沢かよ…!
…アイツはさっき帰ったよ。
御幸が倒れてからずっとお前の世話してたぜ?」
「俺、倒れたんだ…」
なんて、他人事のように呟けば
倉持に思い切り額を指で弾かれた
「いてっ!俺、病人!!」
額を抑えて訴えるけど
倉持は素知らぬフリをする
「深沢が先生呼びに行く途中
たまたまぶつかった白州が事情を聞いてノリとお前を運んだり、大変だったんだからな!!」
「…白州、Aちゃんとぶつかったの?」
「反応するとこそこじゃねぇよ!!」
あからさまに不機嫌になる俺を倉持が容赦なく殴った
「だから、俺病人…」
「っるせー!少しは反省しろ!!」
「…してるって」
「どこが!?
テメェ、さっきから深沢のことばっかじゃねぇかよ!!」
「つーかさ…」
「あ"?」
話を変えようとする俺を倉持は睨むが気にせず続ける
「Aちゃんさっきまでここに居たんだよな?」
「あぁ」
「まさか、一人で帰らせたの?」
時計を見れば、もうとっくに10時は過ぎていて
外は言うまでもなく真っ暗だ
Aちゃんの家がたとえ寮から近いからといって、そんな中を一人で帰らせたなら…
「バカか!んなことするわけねぇだろ!!
深沢はちょうど素振りを終えた哲さんが送ってくれた」
「哲さんが?…そっか」
「…なんだよ?哲さんならいいのか?」
大人しくなる俺に
倉持は瞬きして意外そうに尋ねる
「正直、俺以外は誰だって嫌だよ。
けど俺は今このありさまだからな…」
「なるほどな…。
そーいや、お前深沢に何かしたか?」
「なんで?」
「深沢に、なんで御幸と屋上に居たのかって聞いたら、ちょっと話してただけって言いながら顔真っ赤にしてたからよ?」
「あー…」
倉持に問われ、屋上でのことを思い出して顔を沸騰させるAちゃんを想像すれば口許が緩んでしまう
そんな俺を眉をひそめた倉持が見つめる
「告ったのか?」
「いや、ちゅーした」
「…は?」
「だから、キスしたんだって」
「……はぁぁあああーッ!!?」
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作者名:あんず | 作成日時:2015年3月29日 2時