厚樫山で拾えるタイプの天下五剣(notじじい) ページ7
·
青江side
ーーその日の戦場は、少々異色だった。
突然強襲してきた部隊に、僕達はバラバラに分断された。
僕も含めて隊長の岩融さん以外は全員練度上げ目的で厚樫山に来ていたから、強襲に対応しきれずに散り散りになってしまった。
森の中で遭遇したのは、運が悪い事に敵の大太刀。
けれどその大太刀は池にでも飛び込んだのかびしょ濡れで、それに胸辺りに刺し傷があったから僕でも無事に倒すことが出来た。
一体、誰がやったのだろうか。
不思議に思いつつも他の仲間を探しに森の中を駆け回っていたタイミングで、無事に今剣と合流する事が出来た。
けれど、彼が一緒に居たのは仲間でも敵でも無かった。
ーー主に渡された資料の中に写真としてあったその見覚えのある姿に、思わず息を飲んだ。
ーー数珠丸恒次
僕を造った、青江貞次作の太刀。
言わば、同じ刀派の刀だ。
けれども、彼がドロップする戦場は難易度が高く危険だと主たる審神者が判断した為専ら顕現で本丸に迎える手段を取っていた。
唯一の刀派仲間だから出来るだけ早く出会いたたかったけど、中々顕現させるのは難しいようだった。
だから、居るはずが無いのだ。
同じ天下五剣なら三日月さんがいるけど、彼はとっくに練度の最大値に達して悠々自適に隠居している。
何処かの部隊からはぐれたか、と一瞬思ったが直ぐに違う、と分かった。
何故なら、数珠丸はすぐ側の今剣を守るように背中に隠したからだ。
それは、僕が彼を傷付けると思っていたから。
『私は、一体………、………誰だ』
譫言のように呟かれた言葉を隠すように喉に白手袋が破れた手が当てられる。
彼はボロボロだった。
長い筈の髪は短くなり、あちこち傷だらけで、左足首は不自然に腫れていた。
それだけでも、滅多に歪ませない表情を歪めたのに。
ーー近付くなッ!!
その叫びは、正しく拒絶だった。
今剣を守るように抜かれた彼の美しい刀は、あちこちにひび割れが入っていた。
僕達にとって、本体たる刀は文字通りの命だというのに。
本丸の中では古参の部類に入り、短刀達に懐かれる岩融さんが来た時には思わず安心したのに。
数珠丸は、ガタガタと強く震え出した。
まるで、怯えるように。
疲れ果てたように力の抜ける身体。
それでも彼は、最後まで倒れなかった。
手が震えて、身体も震えていたのに。
依然として今剣を守るように抱き寄せて、それからふっと眠るように意識を失った。
岩「……青江」
青「あぁ……絶対に、連れて帰るよ」
初めてだよ。
こんなにも、煮えたぎるような怒りを覚えたのは。
声と顔が良いお兄さんがやってきた→←やめてよして触らないで(震え声)
22人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:花草 アゲハ | 作成日時:2023年8月15日 22時