先生とぼく (ページ5)

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遅れて教室に入ると、
そこの教壇に立っていたのは
さっきトイレで会った新卒っぽい教師だった。

いまいち状況が飲み込めてなさそうな教師の事は気にせず、いつものように窓際の1番後ろの席に座った。

名前の順では本当はもう少しだけ前なんだけど、俺は仕事の関係もあってあまり学校に来れないから、特別に名前の順と席を1番後ろにしてもらっている。

「あ、そうだ。今ちょうど皆に自己紹介して貰ってたんだ。薮…くんもお願い。」

うわ…ちょうどそのタイミングで来ちゃったか。
失敗したな。

「…薮宏太です。1年間、よろしくお願いします。」

軽く頭を下げてそう言うと、女子からは拍手されるけど、男子からは冷たい目で見られる。

ああ、きもちわるい。

胃がムカムカして戻しそうになる。
目の前がグラグラと揺れ始める。

だめだ、こんなところで倒れたら。
変に目立つのは御免だ。

倒れそうになるのを必死に堪えて椅子に座ると、教壇に立つ新任教師がじゃあ次は俺が自己紹介するね！と元気よく笑った。

「相葉です！ついこの間まで大学生で、
皆が僕にとって初めての生徒です！」

明るく元気に、堂々と話す先生に

吐き気がした。

俺とは正反対の人間だ。
きっと今までの人生楽しいことしかなくて、
苦労とかそんなものも特になくて、
同じような明るくて元気な友人に囲まれて生きてきたんだろうな。

いいよな、お気楽でさ。