先生とぼく (ページ17)

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「実は俺も、芸能活動をしていたことがあって。」

「…は？」

突然のカミングアウトに、
自分から出たのは間抜けな声だった。
そのくらい衝撃を受けた。

「薮と同じ事務所だよ。って言っても、薮が入る前の話だけど…」

「…え、っと。すみません全然知らない…」

「知らなくて当然だと思うよ。有名でもなかったし、名前も変えてたしね。男子なら特に知らないと思う。活動期間も短かった上に辞めたのは5年も前だし」

淡々と話す担任。
俺は何も言えなくて、静かな教室には担任の落ち着いて話す声と時計の針が進む音。
異様な雰囲気に耐えられない。
今すぐ出て行きたいくらいだ。
でも、担任のこの話の続きも気になるわけで…。

「事務所がまだ大きくなる前で、当時中学生で右も左も分からないままデビューして…。学校との両立が難しくなって、学校に行くと笑い者にされて。高校2年生の時にアイドルも学校も辞めたよ。」

「学校も…？」

目を丸くして聞く俺に、担任はクスリと笑うと、頭をクシャりとかいた。

「学校にいても笑い者にされるだけだったから。辞めてやるー！って勢いで。でもその時の担任が辞めたあとも面倒見てくれて、結局定時制の高校に転校して、そこから勉強して大学に行ったの。」

驚いた。
こんなに明るくて、言ってしまえばなんにも考えてなさそうな、人生楽しいことしか無かったんだろうなって感じの人が、こんな経験をしていただなんて。

勝手に僻んで嫌っていたのが申しわけないし、決めつけていた自分が恥ずかしい。

「あ、それでね！薮と話がしたいなって思ったの。ほっとけなくて。自分と同じ目にはあって欲しくないから。んで、マネージャーに連絡取って…」

「だから…番号知って…」

「そうそう！連絡先消してなくてよかったよ！ラッキーだった！」

担任はケラケラと笑うと、
今度は優しく微笑んで、真っ直ぐに俺の目を見てきた。

「薮、無理に教室には来なくていい。俺が補習する。他の先生にも頼んでおくから。んで、絶対卒業させる。」

ハッキリ宣言した担任の顔は、覚悟を決めたような強くてたくましい顔をしていた。

この人なら、信じてもいいんじゃないかって。信じても、裏切らないんじゃないかって思った。

この人は、俺を俺として見てくれてる気がした。アイドルという仮面をとっぱらって、俺として…。

ねえ…

「信じてみても、いいですか…。」