やわらかな午後に遅い朝食を【短編集】 (ページ1)

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雨のにおい * Tatsuya.F ページ1

｢あーー、これ今日雨降るなあ｣

突然の気象予報。ベランダのさんに座る彼女はさっきまでトマトに話しかけてた。｢いいねえ、綺麗な緑だねえ｣｢もうすぐ蕾できそうだねえ｣という声が聞こえて、かわいいな、と思いながらも、いつものごとく聞き流していた矢先の気象予報。これはさすがに聞き流せなかった。

辰｢え？雨？｣
｢うん。今日降るねこれ｣
辰｢ソースは？｣
｢私の嗅覚。｣

自分の鼻を指しながらなんの問題もないような顔で言ってるけど、ちょっと待って。なんでそんな自信があるのかまるでわからない。断言しちゃってるもんね。

辰｢おじょーさん、ソースってのは普通、裏付けがある確かな証拠のことをいうんですよ。｣
｢だから、私の鼻が雨を察知してるんだって。｣
辰｢どこからそんな自信がわいてくんのよ｣
｢長年の蓄積だよねこればっかりは｣

逆にたつくんわかんない？って不思議そうな顔で見てくるから、俺がおかしい気がしてきた。普通とか普通じゃないとかそもそも何を基準に言ってるんだって話で。彼女にとっての普通は匂いで気象予報をすることなんだな。

｢トマト屋根の下に入れてあーげよ。あ、洗濯物回して干したかったのになあ。今日はむりだね、｣

ほら、もう雨が降る前提で話が進んでる。

彼女はあんまりテレビもYouTubeも見るほうじゃなくて、SNSも全然やってないらしい。当然天気予報をこまめにチェックしたりもしない。この情報社会で、情報を遮断した生活を送っている。だからこそのマイペースさだと思うけど。

辰｢…トマトって雨の中でも大丈夫なんじゃねーの？｣
｢大丈夫かもだけど、びちゃびちゃになったらかわいそーじゃん｣

人間と一緒！って言われて、確かにそうかもなって思った。