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 井吹は唖然としてしまった。
 成程、云われてみれば、彼女と斎藤との共通点は多い。
 右差しなのは取り敢えずおいておいても、顔の造りや髪質が良く似ている。

 斎藤Aは、一緒に屯所まで来いという誘いを断った。

 「京で、世話になっている屋敷があってな。兄が私の働き口を用意してくれるまで、そこにいることになっている」

 彼女が云うには、明日までに彼女の兄、つまり斎藤が迎えに来るのだという。

 「もっとも、いち兄はその屋敷の場所を知らない故、私は昼間は島原を散策している」

 昼間にだ、と彼女は強調した。

 「その恰好で島原にねぇ……Aちゃん、もてるんじゃねえか?」

 永倉が茶化すように云うと、Aは「まったくその通りだ」と肯んじた。

 「これが兄ならばいざしらず、私は女だ。女にもてても嬉しくない」

 ただ、と彼女は続けた。

 「贔屓の芸妓を持っておくのは、悪くない。既に一人、馴染みがいる」

 「そりゃ自慢か?」

 永倉の言葉に「まさか」とAは笑った。

 「新八さんだってもてるではないか」

 「俺は若い()にもてねえんだよ」

 二人で楽しそうな"云い合い"に入ってしまった永倉たちを見て、原田は「そろそろ行くか」と云った。

 「そうだな。またな、A」

 藤堂も賛成し、原田に続いて歩き出す。

 「新八さん、おいていかれているが」

 「あ? おい、待てよ!」

 永倉も慌てて二人に続く。
 井吹だけは、三人とは別の方向に歩き出した。

 「おい、何処行くんだよ、龍之介?」

 「酒を買い直す!」

 藤堂の呼びかけに、井吹はぶっきらぼうに答えた。

 Aは、人ごみにかき消えていた。

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Chris(プロフ) - ファーストMeさん» わーいありがとうございます! こっちの作品も神様ネタありますから、待ってて下さい! (。>ω<。)ノ (2017年6月15日 13時) (レス) id: c0c9efb09c (このIDを非表示/違反報告)
ファーストMe - “刀と共に生きてきました”から来ました!この作品も凄く良かったです!!更新待ってます!! (2017年6月15日 13時) (レス) id: d48a818a0f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Chris | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/chrisinfo/  
作成日時:2017年5月23日 0時

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