八ノ幕 ページ10
「薬売り様……？」
「何故、そんな顔を？」
その言葉にひとつ、瞬く。
潮風が音を立てて耳の傍を通りすぎる。
しばし薬売りの瞳を見つめていた紫月だが、やがて耐えきれず視線を落とす。
「……恐ろしいのです」
少しの間を置き、ぽつりと落ちた言葉に薬売りが首を傾げる。
「恐ろしい？」
「すべてを呑み込まれてしまいそうで……。あまりに、海が広くて……」
「海が、恐ろしいと？」
こくりと頷く。
恐ろしかった。
芒洋とした海が今にもすべてを沈め、呑み込んでしまいそうな気がして、怖かった。
果てしない海の上にいる自分はあまりにちっぽけだ。
それを突き付けられ、無性に恐ろしくなる。
「船に乗るのが初めてということも、関係しているのでしょうが……」
ザアザアと水面を切って進んでいく船の音を聞き、紫月は瞳を閉じる。
暗闇の中、一人孤独の中に放り出されてしまったかのような心細さに心の臓が嫌な音を立てる。
ぽっかりと穴を空けた不安に怯えた時、ふわりと肩を抱き寄せられた。
はっと目を開ければ、薬売りの胸が目の前にある。
先刻とは違う意味で心の臓が音を立てた。
「薬売り様……？ 何を……」
狼狽したように声をあげるも、宥めるように抱かれた肩を叩かれ、勢いを失う。
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瑪瑙(プロフ) - 黒百合さん» ありがとうございます！私もとても嬉しいです(^^) この二人の行く末がどうなるのか、見守ってくださると嬉しいです！御期待に沿えるよう、頑張ります！！ (2017年11月15日 22時) (
レス) id: 4aa70732e7 (このIDを非表示/違反報告)
黒百合(プロフ) - モノノ怪好きの同士がいてとても嬉しいです！この作品じたいも面白くて夜中まで見入ってしまいました！薬売りさんかっこいいですよねっ！！続き楽しみにしてます！これからもとても楽しみです！二人の関係もとても気になるっ！！頑張ってくださいっ！！！ (2017年11月14日 1時) (レス) id: dabeaa8b16 (このIDを非表示/違反報告)
瑪瑙(プロフ) - 吾君トさん» ありがとうございます！とても嬉しいです！少しずつ近付いていく二人の関係を描きたいなと思っています。これからもよろしくお願いします！ (2017年10月10日 10時) (レス) id: 4aa70732e7 (このIDを非表示/違反報告)
吾君ト(プロフ) - 創作小説の中で1番好きで、毎回の更新を楽しみにしています(^^)夢主さんを想いやる薬売りさんの言葉と行動には毎回ドキドキさせてもらってます！これからもお体に気をつけて更新頑張ってください！ (2017年10月10日 2時) (レス) id: 442a949fe3 (このIDを非表示/違反報告)
瑪瑙(プロフ) - 悠真さん» ありがとうございます！そう言っていただけてとても嬉しいです。少しずつですが、彼らの物語を紡いでいきたいと思います。頑張ります！ (2017年9月11日 22時) (レス) id: 4aa70732e7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：瑪瑙 | 作成日時：2017年9月7日 21時
