話 ページ40
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〈ねえ。何がおかしいのよ(笑)〉
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誰かに脇腹をくすぐられたときみたいに、くく、とみぞおちが震えた。
夜は静かで、音を立ててはいけないような気がして、とっさに片手で口元を覆ったけれど、心配したようには、声は漏れなかった。
何がおかしい、って。
なんにもおかしいことは無い。
ただ大野は、思うようにいかない身体や、ふらふらと落ち着かない心に呆れていたのだ。
いや、おかしいことはおかしいかも知れない。
自分はひな鳥のようになってしまった。温かな巣に籠ったまま、誰かがエサを運んでくれるのを、ぽかんと口を開けて待っているのだ。
ヘマをして、ころんと巣から落ちても、誰かの優しい手が掬って戻してくれるのだ。
情けない。
この歳でこんなの、なにか特別な病気とかじゃないと許してもらえない……
と思って、自分がそうだった、と遅れて気付く。
ほら。と思う。
鳥みたいだ。3歩歩いたら、3歩前のことをすっかり忘れてしまう鳥。
すっかり馬鹿になってしまったのだ。
これがおかしくなくて、いったい他に何がおかしいって言うんだろう？
〈……大野さん？〉
【ただ、僕の主観ですが、ここには綺麗な言葉が多いように思います】
【どれも、あなたを傷つけるようなことは無いと思います】
サイドテーブルのメモを指で触った。どれも、少し濡れていた。
明日も相葉は食事を運んでくれるだろう、と思った。温かい食事を。
櫻井は、午後3時に、そこの庭を掃きに来るんだろうか。夜に散歩をしたら、また橋の上に立っていてくれるだろうか。
〈泣いてんの…？〉
口に当てていた手を放した。どうせ、笑い声も嗚咽も出ない。
くつくつと、なにかに耐えるような息が漏れるだけだ。
〈え？…ねえ、どっちよ…〉
大野は、自分がどうして泣いているのか、明確には分からなかった。
どうして笑っているのかも、分からなかった。
ただ、話したい。
今日行った場所について。会った人について。
浸かった湯の温度について。風の涼しさについて。
彼の立ち姿の美しさについて。彼の笑顔の爽やかさについて。食事の温かさについて。
触れた手は少しだけ怖かったこと、言葉を新しく知ったこと。
その他どうでもいいこと含めて、今日のこと全部。
話したくてたまらなかった。
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きんにく(プロフ) - 律さん» 律さん！こちらにも来ていただいて本当に幸せです〜ありがとうございます（泣）ご期待に添えるようなお話が書けたらなと思います！ (2021年1月8日 11時) (
レス) id: d7e5080941 (このIDを非表示/違反報告)
きんにく(プロフ) - はるさん» はるさんはじめまして！お越しいただき誠にありがとうございます。そんなふうに言ってもらえて幸せです♪がんばります！ (2021年1月8日 11時) (レス) id: d7e5080941 (このIDを非表示/違反報告)
律(プロフ) - やっぱりきんにくさんの小説が大好きです！癒しです！続き楽しみにしてます！ (2021年1月6日 19時) (レス) id: 820f2de8f4 (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - きんにくさん、初めまして。素敵なお話ありがとうございます。これからも楽しみにしています。 (2021年1月6日 11時) (レス) id: 6cd0f843d6 (このIDを非表示/違反報告)
きんにく(プロフ) - satominさん» satominさんありがとうございます♪毎度毎度、恐縮でございます。おおお…私が読んでる本は暗くて長くて素敵な本です(笑)その人たちみたいに書けたらなあと思いながらなかなか…な日々です(笑)嬉しいことを聞いてくださってありがとうございました♪ (2020年12月28日 23時) (レス) id: 3c003d42b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きんにく
| 作成日時：2020年10月19日 16時
