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雨の降る城崎は、うそみたいにキレイだった。



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----『城崎いうんはねえ、昔からね、雨が降って濡れてね、うそみたいにキレイなるんですわ』



ぼんやりと灯るオレンジの外套。雨音の踊るコンクリート。

濡れてまるくなった下駄の音。


水たまりに映った信号の、赤、緑、黄色のライト。

夜の、柳のあやしい影。



ときどき車が走っていたけれど、ヘッドライトが照らす雨粒すら、いつもよりずっと美しく見えた。



大野はしばらく、火照った身体を持て余した。



どくどくと、いつもより心臓が多く鳴った。

気が昂っているけれど、頭はぼうっとして、あまり難しいことを考えられなかった。


ただ、露天風呂で聞いていた、老人の掠れた声と、洞窟のようにぽっかりと開いていた口のことだけが、ぐるぐると思考を占めていた。



濡れそぼった柳の木に、気まぐれに触りながら、自分が濡れることを気にせずにつらつらと歩き、


ふと何気なく目を遣った、石造りの橋の上に、人が立っているのを見つける。



(…あ……、)



その横顔に見覚えがあった。

短いえりあしと、すっと伸びた首から背中のラインと。


深緑の、仲居の制服を着ていなくても、私物であろう上品な浴衣を着た立ち姿は、やはり洗練されているような感じがする。




大野が一歩、踏み出す前に、あちらが大野に気がついた。




目が合うと、ふっと微笑む。

雪どけや、うすい色の花の開花を連想させる笑み。



(雨の城崎……うそみたいに……)



見惚れて動けないでいたら、橋を降りてきてくれた。


ちょいちょいと手招きして、差していた傘に、大野の身体を入れて、もう一度

表情をうかがうように、目を合わせた。



【雨でもなかなか綺麗でしょう、ここは】



傘を差したまま、器用に書いて渡されたメモ。


ここでやっと大野は、風呂屋に傘を忘れてきたことに気がついた。

あまりに焦って飛び出したので、傘立てを気にする余裕が無かったのだ。

雨が降っていることに気がついても、傘を差すことが分からなかった。



大野は悲しくなった。



ぼんやりして、分からないことや気づかないことが多すぎる。


いずれ人に迷惑をかけるような気がしてくる。というか、もう既にかけている。


二宮は今頃東京で、自分が休んでいる間、仕事をつなぐために奔走しているだろうし、相葉は自分に、必要以上の世話を焼いているだろうし


櫻井は、今現在、自分に傘を分けて、肩を濡らしているのだ。

傘→←急



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きんにく(プロフ) - 律さん» 律さん!こちらにも来ていただいて本当に幸せです〜ありがとうございます(泣)ご期待に添えるようなお話が書けたらなと思います! (2021年1月8日 11時) (レス) id: d7e5080941 (このIDを非表示/違反報告)
きんにく(プロフ) - はるさん» はるさんはじめまして!お越しいただき誠にありがとうございます。そんなふうに言ってもらえて幸せです♪がんばります! (2021年1月8日 11時) (レス) id: d7e5080941 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - やっぱりきんにくさんの小説が大好きです!癒しです!続き楽しみにしてます! (2021年1月6日 19時) (レス) id: 820f2de8f4 (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - きんにくさん、初めまして。素敵なお話ありがとうございます。これからも楽しみにしています。 (2021年1月6日 11時) (レス) id: 6cd0f843d6 (このIDを非表示/違反報告)
きんにく(プロフ) - satominさん» satominさんありがとうございます♪毎度毎度、恐縮でございます。おおお…私が読んでる本は暗くて長くて素敵な本です(笑)その人たちみたいに書けたらなあと思いながらなかなか…な日々です(笑)嬉しいことを聞いてくださってありがとうございました♪ (2020年12月28日 23時) (レス) id: 3c003d42b5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きんにく | 作成日時:2020年10月19日 16時

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