同じ過去を辿った者同士 ページ9
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軍事施設の前に似つかわしくない格好の女の子が一人。
拗ねたようにしゃがみこんでスンスン、と鼻を啜っていた。
大きな怪我などもなさそうで安堵から、ふと、緊張が解ける
｢風邪引きますよ｣
｢……いいです。引いても｣
｢自分は良くないから言っているんです。｣
｢別に茨には関係ないです｣
｢ほう？マネージャー業はどうするんですか？｣
｢風邪ひいても出来ますもん。｣
少しずつ近づくが逃げ出す気配はない。
まるで鳴いている野良猫に手を差しだす気分だ
｢……A｣
自分でも驚く程の優しい声で名前を呼ぶ
眉間に皺を寄せたまま、チラッとこちらを向いた。
その可愛らしい姿につい頬が緩んでしまう
Aの方を向いたまま隣にしゃがみこみ、頭を撫でる。
｢………嫌、でした。｣
また地面に向かって話し出す。
何が、とは言わずに相槌だけ打った。
｢昔の、施設の時の訓練のせいで傷だらけになった身体は、誰にも見られたくなかったんです。｣
成程。
見られなくなかったものを不意打ちで見られ、つい手が出てしまった、と。
撫でることを辞め、そのまま立ち上がる。
｢A。自分と同じは嫌ですか？｣
｢…何のことです？｣
｢これです。｣
服の裾に手を入れ、自身の胸あたりまで捲った
衣装などで見える時はコンシーラーなどで隠しているそれは、きっとAと同じもの。
｢い、いばら、｣
｢これは銃撃の訓練の時。これもですね。…でこれは戦場に初めて立った際にやられたもので｣
幾つもあるそれらを指差しで記憶を辿っていれば、急に視界が黒く変わる。
…Aに抱き締められたから、だ。
｢…嫌じゃないです、いばら、ごめんなさい｣
｢謝るのは俺にではないですよね？殿下も心配してました。貴方は兄不幸者にでもなりたいんですか？｣
｢なりたくないです、｣
｢なら帰りましょう。ほら、顔をあげてください｣
｢う、ぶさいくなので嫌です｣
自分の体に抱きつき顔を埋めるAの両頬を手で挟み、無理やり上を向かせた。
泣きすぎたせいか、目の周りは赤く腫れ、未だに涙が流れている
｢あっはは！Aは可愛いですよ！何をしていても｣
泣いていても、怒っていても、笑っていても
全てが愛おしく感じるなんて相当きているのか。
身長差のせいで上目遣いになる彼女に
そっと唇を重ねた。
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作者名：はなちゃ | 作成日時：2022年10月12日 18時
