指切りげんまん ページ2
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「お疲れ様です。日和お兄様、ジュン」
「うんうん!ありがとうね!」
「Aもお疲れさんです。」
ずっと座りながら収録してた彼らは大きく伸びをした。
もうみんな荷物は纏めてあって、使用人の車も下につけてある。
茨は少し前に部屋を出て凪砂様を呼びに出た。
ジュンもお先っす〜、と足軽に部屋を出ていく。
「……あの、先程は不躾な態度をとってしまい申し訳ありませんでした。」
「A、確かに僕とAの血は繋がっていないけど、君は大切な僕の妹だね。たまにはあんなのも面白くていいね!」
「面白かったんですか」
「人間らしいというか、Aらしくて僕は好きだね!」
わしゃわしゃと犬を撫でるようにいつもとは違う、雑な撫で方をされる。
数時間前まで言い合いをしていたとは思えないな、と思っていれば先程のことを蒸し返すように口を開いた。
「ところで、茨に気持ちは伝えなくていいの?」
「……伝える気はないですよ。Edenのマネージャーをさせていただいてますが、自分はあくまでも巴家に仕える者ですので。」
そう言えば日和お兄様は少し寂しそうな顔をした。
アメジスト色の瞳がゆらゆらと揺れる。
私はこれに弱い。
つい、日和お兄様の手を退けてしまう。
「行きましょう、皆さんがお待ちです。」
「A」
「…はい。」
「僕にはちゃんと考えていることがあるから。だから、Aは何も気にしないで前を見て進んでほしいね。僕とのお約束」
そさくさと自分も外に出ようとすれば、そう伝えられた。
差し出された日和お兄様の小指に昔みたいに自分の小指を絡める。
日和お兄様は切なげに笑い、指切りげんまんと言った。
「家族には幸せになってほしい。それが僕の願いだね。」
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作者名:はなちゃ | 作成日時:2022年10月12日 18時